問題が解決できないというとき、実は、問題の解決方法が見つからないのではなく、業務の所掌が明確になっていないため解決の手順や糸口が見つからない、組織をどう動かしたら良いか(手続き、調整要領など)が分からない、業務を進める際の人間関係が気にかかる、などという極めて実務的、人間的な問題が原因なっていることが、多いものです。
また、役所や企業で危機管理を所掌している方々は、「皆、目の前にある現実の業務に追われていて忙しいので、現実に起きていない防災や危機管理に関する問題に対しては、時間をとってくれない」「ただでさえ忙しいのに、迷惑をかけるわけにいかない」と、あきらめ顔で現状を語ります。
この現状を踏まえ、問題解決に取り組む際には、まず、一つだけ“確実に解決できる問題”を選択することから始めます。
問題が多すぎて、うまく整理できないときには、グラフの縦軸と横軸に、「問題の影響の大きさ(重要度)」と「問題が生起する可能性の評価」をとって、グラフ上に予想される問題を展開すると、位置づけが分かりやすくなり、評価しやすくなります。
重要だと思っても、解決できない、あるいは対策不可能だと判断した場合は、なぜ解決できないのか、なぜ自分では対策できないのか、だけを明らかにして、後回しにして構いません。・・・解決できる見込みがないのですから、それで問題なし。
大事なことは、まず「できることに手をつける」ことです。
一つだけに絞りきれないときには、優先順位を決めます。
決して、無理をせず、最も重要な問題の一部分だけでも構わないので、前進することだけを考え、できることから手をつけます。動けば、新しい流れが生まれます。
重要性の判断基準は、人命に関わること、多くの人たちが「良かった」「助かった」と感じて、喜んでくれること。
もし、「皆、目の前の業務に追われていて、忙しい」という人たちの仕事よりも重要だと思えるものが見つからないのであれば、仕事に着手するべきではありません。はっきり言って、それこそ迷惑。あなたが、より重要だと思う仕事のお手伝いをした方が役に立ち、喜ばれるでしょう。それが片付けば、あなたの仕事に順番が回ってくるかもしれません。
「重要だ」と、仕事の意義を見いだすことが、仕事の出発点です。
「重要な問題を一つに絞り込む」ということは、明確な目標を持つことと同じ。そして、「優先順位をつける」ということは、一つひとつの中間目標を達していけば、大目標を達成する「道しるべ(道程)」が明らかになるということです。
明確な目標を持てば、努力を集中することができます。
最も重要な問題が解決に向けて動き出すと、他のケースは、それに準じて対処できるようになります。
基礎自治体における課題は、現行の法令・条例・規則の下で、
どこまで自分たちが活動できるのかをしっかりと考えること
だと思います。
どのように甚大な自然災害が起きても、
緊急事態宣言などが出されない限り、現行法令下での
基礎自治体の責任を果たさなくてはなりません。
「考えられないことを考える」のが、危機管理の第一歩です。
現実的な当事者意識をもって「できることから手をつける」。
事前準備は、地道な努力の積み重ねしかありません。