《六本木の話が出てくると、私も時代と時間の経過を感じてしまいます。

初めて防衛庁で勤務したのは、平成元年(1989年)。バブルの真っ盛りで、六本木の交差点付近には、深夜まで、スタイルの良い美形の外国人男女がチラシを配りながら客引きをしていた時代。それを横目で見ながら足早に通り過ぎ、勝手に、知りもせぬロートレックのムーランルージュなんぞを想像しながら、防衛庁に通っていた時代。

たまに檜町公園を散歩することもありました。

歩兵第1連隊の建物と話は、その当時の私にとって、すでに遠い昔話でした。

そういえば、某大大名家のご当主とお話ししていて、都心にある小さな神社の話になったとき、「ああ、あそこはうちの下屋敷のあったところですから、お祀りしていたんでしょう」と。その方のなかでは、歴史が続いていたのですね。》

昨日、「三丁目の夕日」という映画を久しぶりに、また見ました。あの映画が私の育った時代。そう、映画に出てくる東京タワーが作られているとき、私は毎日その場面を見ながら、竜圡町から六本木の六本木通りを飯倉片町の麻布小学校に通っておりました。

時代再現も素晴らしく、中に出てくる大きな土管も。現在の赤坂ミッドタウンの六本木寄りの地下鉄出口、旧防衛庁角で、公衆トイレがあったところを檜木町公園に下るところに、都だか国だかの資材置き場があり、そこに砂、砂利と、土管が置いてありました。

私たち悪ガキ小学校の格好の遊び場だったのです。子供って面白いですね。少し先に行けば、広い檜木町公園。そしてその角から歩いて6~7分のところにも、三河台公園があるのに、なんでこういう怒られそうなところで遊ぶのでしょう。

義兄の孫のおチビさんも、人の顔を見ながら、ここまでやっても怒られないギリギリのところを楽しんで遊んでおります。まだ4歳の保育園児ですが、5つ上に姉がおりまして、よく喧嘩しております。姉のことを蹴るので注意しますと、なんと「筋肉が勝手に動いちゃうんだよ」と。一体どこで覚えてくるんだと、兄とも話しております。

今日もお客様との会話で、「1970年当時の私のなかで、1番大きな日本の作り物は東京タワーだった」と話しておりました。それが今では、東京タワーが小さく見えるような建物が、回りにいっぱい建っておりびっくりします。

1973年の夏、7月29日。3年ぶりに日本に帰ってきたとき、従兄弟が「この3年の間に東京が様変わりしたから、案内するよ」と云って、首都高を車で回って、その変貌ぶりを見せてくれました。たしか銀座当たりだったと思います。ビルの谷間を縫って走っているときに、バカバカしい話ですが、こんなに重い物を建てちゃって大丈夫かよ、地球って頑張っているんだと、本気で思ったのを今でもはっきり思い出します。

1970年当時フランスの大きな建物と云えば、1889年パリ万博で建てられたエッフェル塔で、それ以外は、1969年にできたパリ郊外のLa Defenseラデファンスに作られた近代的ビルと、映画「モンパルナスの灯」で有名なモンパルナス駅ビルしかありませんでした。

東京オリンピック後、日本は高度成長期に入って、海外旅行にも盛んに行くようになり、続三丁目のなかにも、航空会社のロゴ入りバッグを持って旅立たれるだろうシーンがあったような気がします。パリのお土産屋さんにも盛んに日本人の団体旅行のお客様がお見えになっていました。

お土産屋さんの話で面白いというか、ビックリな話が、一つあります。1970年代は今の中国人のように、日本人が多く団体でパリに旅行に来ておりました。その前は、メキシコ人だったそうです。そしてこのメキシコ人は、香水を買うときに、日本人のようにオンス単位ではなく、ガロン単位で買っていた、大事なお客様だったそうです。

ガロンですよ。今、辞書を引いてビックリ。米1ガロンは、3.78ℓですって。本当かな。たぶん香水とL’eau de Toiletteロ・ドゥ・トワレットか、オー・デ・コロンと間違えたのでしょうと思い、よく分からないのでネットで調べました。同じ物でした。違いは、濃度と香りの持続時間でした。

Parfumパルファン香水、濃度15~30%、持続時間5~12時間。Eau de Parfunオ・ドゥ・パルファン、10~15%、5~12時間。Eau de Toiletteオ・ドゥ・トワレット、5~10%、2~5時間、Eau de Coloneオー・デ・コロン1~5%、1~2時間だそうです。

料理人の私には、一番縁のないものです。料理人の天敵は、味みと香りです。

味みは、2回までで決める。3回目以降は舌が慣れてしまい、1番最初が、1番よく分かる。鼻の方は、もっと早く慣れてしまいます。この二つの器官は、生命を守る面では非常に重要な役割を果たし、とても敏感にできています。繊細ゆえに多用すると、脳にストレスをかけてしまうので、脳がストップをかけてしまいます。自分の体臭や口臭が分からないのはそのためで、すぐに他人を識別できます。

だいぶ話がそれてしまいましたが、本当に書きたかった話は、赤坂ミッドタウンの前は防衛庁で、その前は米進駐軍の女性士官隊、その前は歩兵1連隊で、その前は毛利家の下屋敷で、時代によって変わっていくものですね。

あるお客様の話がいつも頭の隅にありまして、それは「利男君、あそこは昔、オレんちだったんだよ」です。この方は、旧お殿様系の方で、落ちが「江戸時代にね」でした。

https://www.saibouken.or.jp/?p=2913