3 数息法

臨済宗・禅宗では、坐禅が精神修養の方法として行われ、合わせて、坐禅とともに数息法(数息法:すそくほう)が行われるようになりました。

数息法(数息観)については、古代仏教の瞑想にその大本となる考え方があります。

瞑想では、「瞑想をしながらひたすら集中すること」(サマタ;「止」)と、「瞑想しながら観察をすること」(ヴィパッサナー;「観」)が大切である(「止観」)と言われています。

止観の瞑想を初心者が分かるように考えられた呼吸法が、「数息法」です。

楽な姿勢で座り背筋を伸ばします。軽く目を閉じ、数息にとりかかります。数息法では、特に呼気・吸気どちらかに意識を向けるとかはしません。自分で、自然な呼吸をしながら、心の中で息の回数を数えます。ここでは吸う息・吐く息を1セットとして数えてください。

その際、以下を意識することが、数息法の大切なポイントになります。

  • ひたすら呼吸に意識を向けて数える。
  • 雑念が出てきたら、それらにとらわれず数息(息と息を数えること)に意識を戻す。

数息法という腹式呼吸法は、集中力を高め、自己観察につながり、メンタルヘルスに好影響を及ぼすと考えられています。

4 腹式呼吸

人は、1分間に約15回、片時も休むことなく呼吸して、空気中の酸素を取り入れ、栄養素を燃焼させてエネルギーに換えて、活動しています。

この呼吸のリズム運動は、自律神経と連動して、身体の調子を整えていますが、1日に約2万回、1年に約730万回も空気の出し入れを繰り返していると、加齢とともに衰えが見えてきます。

ふだんから息苦しさや呼吸のしづらさを自覚する状態が生じ、これが慢性閉塞性肺疾患にまで悪化する者が国内で約530万人いる、と言いますから他人事では済ませません。

この無意識に、恒常的に行われている呼吸する力を維持することは、心と身体、感情と健康を安定して働かせるのに不可欠の基盤になります。

呼吸機能は衰えはじめたら不可逆的に進行するわけではなく、胸の呼吸筋を鍛えることで、呼吸機能を改善することができます。

■呼吸筋の力を向上させる5つのポイント

呼吸筋の鍛え方は、「生活習慣によって、いつの間にか鍛えられていた」という、自然体の習慣づけがベストで、次の5つに集約されます。

  • 胸を張り、背筋を伸ばして姿勢をよくする。
  • 呼吸筋をやわらかくするストレッチを行う。
  • 長く声を出したり、声を出して歌ったりする。
  • 息を吐ききるトレーニングをする。
  • 有酸素運動や持久運動を行う(主にウォーキング)。

ほとんどは説明不要なほどわかりやすく、すぐにでも実践できるものばかりです。

2つめのストレッチは、少しわかりにくいですが、立位の状態で、鼻からゆっくり息を吸い、口からゆっくり息を吐くサイクルを繰り返しながら、両肩を上げ下げしたり、首を横に傾けたりするといった動作をするものです。

なかでも「息を吐き切るトレーニング」は、息を吐いたときに肺に残る空気の量(機能的残気量)を減らすためのもので、加齢によって残気量が増え、代謝が衰えてくるので、特に重要になります。

『すべての不調は呼吸が原因』(本間生夫著、幻冬舎新書)では、次のような「息を吐き切るトレーニング」によって呼吸筋を鍛える方法を、紹介しています。

① スポーツ吹き矢

「呼吸機能を大きく引き上げるメニュー」の1つが、シニアを中心に流行しているスポーツ吹き矢です。

「この吹き矢、『息を吐ききる力』をつけるにはもってこいなのです。遠く離れた的を狙って勢いよく息を吹いて矢を放つわけですから、肺活量が鍛えられないわけがありません。それに、的に命中させようと神経を研ぎ澄ますプロセスは、集中力を養うことにつながりますし、的に的中したときのよろこびや達成感は、日々のストレスを解消させることにもつながります。」

スポーツ吹き矢は、全国各地のカルチャーセンターなどで体験できます。また、同じような効果があるということで、果物の種飛ばし競争に参加することも勧めています。

2 息を「吹く」楽器

吹いて音を出す吹奏楽器も、肺から息を吐ききるトレーニングの一環としてよいと言います。 この利点は、スポーツ吹き矢と違って自室でいつでも行えること。トランペットやサックスのような本格的な吹奏楽器でなくてよく(そもそも肺の弱った人には不向き)、オカリナやハーモニカのような、値段も手ごろで手軽に取り組めるものがよいでしょう。

3 日本語の名文を音読

また、七五調の名文を声に出して読むことが「呼吸のトレーニングとしてもたいへんおすすめ」で、この七五調のリズムの文章は、「日本人の呼吸に合っている」というのが1つの理由に挙げられています。

また、大きく長く声を出す詩吟、謡、カラオケ、お経を唱えるのも、呼吸筋の鍛錬になります。

日本人の平均寿命は延びたが健康寿命はこれより10年は短い、という問題が指摘されていますが、生活習慣として呼吸トレーニングをやってみる価値があります。

本間博士は、「呼吸トレーニングをしていけば健康寿命を10年は引き延ばすことができる」と力説しています。