1 瞑想の導入

瞑想は、集中力を高める、自己コントロール力やストレス対処力をあげる、などの効果から、多くの企業や臨床現場で使われていて、うつ病の再発予防や全般性不安障害、摂食障害などの心身症に効果があるだけではなく、生活習慣病の予防、さらには、認知機能にも好影響を与えるとされています。

例えば、短期記憶の容量や注意の持続機能の向上、集中力、認知的柔軟性(問題の新しい捉え方)に影響を与えることが知られています。また、肩こり・腰痛やがん性疼痛などの痛みを和らげたり、コントロールしたりするために瞑想を勧める医師が増加しています。

グーグルやヤフーなどの社員研修・福利厚生に取り入れられていることは有名です。

2 瞑想で起こる身体の変化

脳機能向上

脳の背外側前頭前野、前頭前野、前帯状回、内側眼窩前頭皮質と呼ばれる部分をMRIで解析すると、数時間の瞑想で、同部の活動が有意に増えることが確認されています。

自律神経のバランス改善

脳で「ストレス」と認知された刺激は、迷走神経に代表される自律神経系、内分泌系、免疫系を介して全身に伝達され、身体的、心理的な反応を引き起こし、精神疾患以外にも生活習慣病など様々な疾患の引き金になると考えられています。

瞑想は、ストレスホルモンであるコルチゾールを減少させ、自律神経のバランスが崩れにくい状態を作ります。

自律神経の指標である「心拍変動 (RR間隔変動) 」などを瞑想前後で比較したところ、瞑想することで副交感神経活動の亢進状態が導かれ、その状態を持続させることが明らかとなっています。

3 マインドフルネス瞑想法

マインドフルネス瞑想法は、東洋の仏教的な瞑想に由来していて、今、この瞬間に意識を集中し、評価や判断にとらわれずに、ただ今起きていることに集中して、落ち着いた心の状態を創り出す瞑想法です。

瞑想がパフォーマンスを向上させる原理の一つとして、「脳への情報遮断」が知られています。

例えば、スポーツ心理学において、「ルーティン」と呼ばれる儀式的な動作は、不要な情報を遮断し集中力を高めることが知られています。バスケットボール選手がフリースローをする前に必ずボールを 2回バウンドさせたり、野球選手が打席に入る前に毎回一定のストレッチの手順を行ったりすることがその例です。

また、作家がホテルの一室に自分を缶詰状態にして執筆するのも同様の効果があると考えられています。

マインドフルネス瞑想法は、これらの「ルーティン」と同様に、自分のカラダ(動き・呼吸・身体感覚など)やココロ(感情・思考など)に注意を向け、今、この瞬間に注意を集中することにより、余計なことを考えないようにすることを可能にします。

これはヨガや座禅にも取り入れられていて、例えば、座禅における「調息(ちょうそく)」は、深呼吸してリラックスしようとするというよりも、ただ自分の呼吸をゆっくり数えることによって呼吸をモニタリングすることに集中させる方法です。

マインドフルネス瞑想法は、最も古典的な第一世代の「行動療法」、第二世代の「認知療法」に続く、第三世代の「認知行動療法」の一つとして注目されています。

認知行動療法、特にマインドフルネス瞑想法は、古典的な認知行動療法よりも効果的だった人が多く、かつ再発率が低いということから、行動変容を要する多くの疾患群に応用されています。

4 マインドフルネス瞑想法の実践

マインドフルネス瞑想法は、ネガティブ感情の制御を高め、日々の活動のパフォーマンスを良好にし、健康観(well-being)の感覚を達成させると考えられています。

○ ポイントは「ゆっくりした動作

日常生活において無意識 にしている歩行や食事のような自動化した動作を、時間をかけてゆっくり繰り返してみるだけでもマインドフルネスがどのようなものか体験することが可能です。

修行僧が掃除や薪割りや畑仕事などの「作務」は、一つのことに集中して雑念を払う日常における精神修養、修行の機会だと考えられています。書が僧侶の一つに取り入れられているのも同じ理由ですが、書の場合には、そのときの気持ちの持ち方が、文字になって現れます。

スポーツの経験者であれば、すでに体得し自動化されているスポーツの基本的な動作(例えば、ゴルフのスイングの動き)を通常の数倍の時間をかけて行ってみることで類似の体験ができます。途中で雑念が浮かぶこともありますが、それを雑念と認識し、今行っている動作に注意を戻します。

例えば、座って瞑想をするときには、息が入ってきて出ていくのに合わせて膨らんだり縮んだりする身体感覚に注意を向けます。 「ふくらみ、ふくらみ、縮み、縮み…」と心の中で 唱えて、自分のカラダの動きとその認識を一致させます。

途中で「かゆい」などの感覚や別の考えが頭に浮かぶこともありますが、それらを「雑念、雑念」と認識し、次には 「戻ります」 と心の中で言いながら、呼吸に伴う身体感覚に注意を戻します。

呼吸は1分間に6回を目安とし、15分以上続けることが望ましいでしょう。

「瞑想」は、「五感」を使って一つ一つの感情に注意を払うことで、他の情報や感情を排除し、感情をリセットし、集中力を高め、問題点から距離を取ることによって、自分の感情をコントロールしやすくします。

これに加え、生活習慣病の予防、認知機能向上、疼痛緩和などさまざまな医学的効果が報告されており、手軽に誰でもどこでもできることで注目を集めています。

5 ヨガ

ヨガが、心理学的、生理学的にプラスの効果を示すという、さまざまな研究成果が出されています。

イラクやアフガニスタンで戦闘した元米軍兵士も、ヨガのプログラムに参加した結果、不安やうつ症状、衝動的行動の軽減、喫煙量を減らす効果が現れ、楽観的な気持ちや幸福感が増し、感情のコントロールが利くようになったという報告があります。

ヨガは、身体の動きと呼吸のコントロール、そして瞑想による心の集中を同時に行う、素晴らしいセルフ・コントロールの手段だと言われています。

https://www.saibouken.or.jp/archives/3108