被災者は、震災による衝撃を受けてから、4つの段階をひとつずつふまえながら順番 に生活を建て直していきます。
① 第1の段階 「失見当」
もともとは精神医学の用語。
「震災の衝撃から強いストレスを受けて、自分の身のまわりで一体何が起こっているのかを客観的に判断することが難しくなり、視野が狭くなってしまう状態」のことを言います。
人によって差はありますが、災害発生から10時間くらい(災害当日)は、誰もがこのような精神状態におかれます。
② 第2の段階 「被災地社会の成立」
失見当の時期が終わると、だんだん客観的に物事をみるようになります。
安否確認が終わり、被害の全体像が分かってきて、「とんでもない事態になってしまった」ことを実感し、災害という現実が目の前に突きつけられます。
この段階を「被災地社会の成立」の段階と言います。
平均すると災害発生後10時間から100時間(災害発生後2~4日間)の頃になります。
③ 第3の段階 「災害ユートピア」
3つめの段階は、「災害ユートピア」の段階です。
ユートピア(Utopia)とは、16 世紀にイギリス人トマス・モアが作った言葉で、現在は「皆が共存共栄できる穏やかな理想郷」のような意味で使われています。
災害によってできた新しい環境の中で精一杯生きるために、皆でルールを作って、避難所で炊き出しをしたり、支援物資を分配したりして生活をする。性別や年齢、社会的な地位は関係ない、一種の原始共産制のような社会状態が生まれます。
阪神・淡路大震災で言えば、「がんばろう神戸」の世界です。
災害後100時間から1,000時間(災害後2~4日間から災害後2か月)くらいの時期になります。
④ 第4の段階 「現実への帰還」
4つめの段階は「現実への帰還」の段階です。
上下水道や都市ガスなどのライフラインが回復して、自宅で日常生活を過ごせるようになり、家屋の被害が軽かった人から自宅に帰ります。
避難所などで皆が一緒に頑張った「災害ユートピア」の時期が終わり、人々に「被災者から市民として」日常生活が戻ってきます。
災害後 1,000時間以降(震災後2か月以降)の時期になります。