2 家屋被害程度が大きい被災者は、被災者意識から抜けられない

「自分が被災者だと意識しなくなった」時期は、家屋被害を受けた程度によって大きな差がみられます。

「自分が被災者だと意識しなくなった」人が 50%を超えた時期は、家屋被害がなかった被災者が震災後1か月であったのに対して、一部損壊家屋の被災者は震災後1年、半壊家屋の被災者は震災後2年~3年、全壊家屋の被災者は震災後4年~5年になりました。

特に注目すべきは、層破壊家屋に住んでいた被災者です。

層破壊とは、全壊の中でも厳しい被害のことで「家が丸ごと潰れてしまったり、ある1階の部分がペシャっと潰れてしまったりした家屋被害」のことです。この層破壊の被災者は、震災から9年目を迎えた調査時点(2003年1月)でも過半数の52.5%が「自分はまだ被災者である」と意識していました。

このことから、家屋被害を軽くするように備えること、また、万が一壊れてしまったとしても、保険・共済・支援等でいち早く再建をすることが、心理的にも、被災者モードからいち早く日常生活を再建するための重要な備えになる、と考えられます。

3 生活再建の課題には7つの要素がある

神戸市では、先述した「震災復興総括・検証研究会」にて、神戸市民に対してワークショップを行い、「自分たちの生活を再建する際に、具体的にどのようなことが課題になったのか」をまとめました。

その結果「すまい、つながり、まち、そなえ、こころとからだ、くらしむき、行政とのかかわり」の7つが生活再建の課題であることが分かりました。

生活の基盤になる①すまい、さまざまな形での②人と人とのつながり、ハード・ソフト両方についての③まちの復興、安全・安心な都市にするための個人や地域での④そなえ、心身の健康という意味での⑤こころとからだの問題、家計・仕事・地域経済などの⑥くらしむき、災害復興において大きな役割を果たす⑦行政とのかかわりの7点です。

 生活再建において、地域での連帯・さまざまな人々からの支援など、「人と人とのつながり」を意識させる活動が、阪神・淡路大震災被災者にとって、大きなウエイトを占めていました。 復興では、とかくハード面での復旧・再建が大きく取り上げられますが、「人と人とのつながりを保ちながら再建していくこと」を忘れてはなりません。

https://www.saibouken.or.jp/archives/3314