3 活動要領

「見る」「聞く」「つなぐ」の3つが活動要領の原則です。

まず、名前と所属などについて自己紹介をして、緊急に必要とするニーズを聞きます。

被災者の状況をよく「見て」観察し、被災者に寄り添って話をよく「聞いて」ニーズを把握し、それを公的機関や専門家などに的確に情報提供して、「つなぐ」ことで、被災者に役立つ支援を実現します。

被災者の自立(自律)と支援を効果的につなぎ、被災者と公的機関の信頼を強くすることで、長期的な回復を促すことができます。

■見る

① 安全を確認する。

  • 当面の身の安全を確保する。

② トラウマを想起させるものから安全を確保する。

  • 災害で経験したことの特徴や過酷さ
  • 死別体験
  • 両親から離れた子供たち
  • 災害の結果失われたもの
  • 強い罪悪感、あるいは恥の感情(生き残ったことや他の人を助けたり守ったりしなかったことなどに対して)

③ 明らかに急を要する基本的ニーズなどを把握する。

  • 衣食住の確保
  • 身体疾患と必要な薬
  • 発達上の問題に心配がある者
  • 以前の心理的問題、トラウマや喪失体験
  • 自分または他者を傷つけようとする考え
  • 家族、愛する人との離別状況、あるいはその人の安全に関する心配

④ 深刻なストレス反応を示す人を把握する。

  • 身体症状(震え、頭痛、ひどい疲労感、食欲不振、痛みや疼きなど)
  • 泣く、悲しみ、抑うつ気分、悲嘆
  • 不安、恐怖、いらだち、怒り
  • 「 警戒」する、「びくっ」とする。
  • 不眠、悪夢
  • 混乱、感情の麻痺、現実感の喪失、ぼんやりしている。
  • ひきこもる、身じろぎしない、動かない、反応しない、話さない。
  • 見当識障害(自分の名前がわからない、自分がどこから来たのか、・何が起きたのかわからないなど)
  • 自分のケアができない(食べない、飲まない、簡単なことを決められないなど)。
  • 子供のケアができない。

■聞く

① 支援が必要と思われる人びとに寄り添う。

  • 敬意といたわりをもって、お役に立ちたいという姿勢で接する。
  • 静かな落ち着ける場所で話をする。
  • 水を差し出すなど、ほっとできるような手助けをする。
  • プライバシーと尊厳を守る。
  • メディアにさらされぬよう保護する。
  • 深刻なストレス反応を示している人は、一人にしない。

② いつも、必要なもの、気がかり、心配についてたずねる。

  • 最も急を要するニーズを特定する。
  • 何から手をつけたら良いのかを整理できるようにする。
  • 実行計画を検討する。
  • そのニーズに向けて行動する

③ 被災者の声に耳を傾け、気持ちを落ち着かせる手助けをする。

  • 穏やかな優しい声で話す。
  • 自分の呼吸に注意を集中して、ゆっくり息をするようにすすめる。
  • 失礼にあたらないように配慮しつつ、目を合わせながら話す。
  • あなたが援助のためにいるということを相手に伝えるために、指や手のひらで膝をたたくなど、適度なスキンシップを交えながら話す。
  • 次のようなことをしてもらい、気持ちを落ち着かせる。
  • 床に足をつけてそれを感じてもらう。
  • 周囲にある苦痛をもたらさないものを選んで、注意を向けてもらう。そして、見たり、聞いたり、感じとれるものを選び、何が見えるか、聞こえるか、教えてもらう。

■つなぐ

① 衣食住など、生きていく上での基本的なニーズが満たされるようにする。

  • 何から取り組んだら良いか、すぐ取り組む必要があることは何か、後回しにできるものは何かを、被災者が考えられるようにする。
  • できるだけ前向きな対処をするように勧める。
  • 重要な意思決定に際して意見を求め、その決定に関与する機会を作る。
  • 負傷者の治療、慢性的な(長期の)病気を持っている人への援助をする。

② 利用できる社会的支援に関する正確な情報を提供する。

  • 公的支援に対して信頼感を与える。
  • 同じ情報を全員が聞けるようにする。
  • 必要な情報を全員が分かるように掲示する。

③ 家族、友人、大切な人、社会的支援と連絡がとれるようにする。

  • 家族が離ればなれにならないようにする。
  • 友人や親戚、大切な人への連絡手段を提供する。
  • 被災者同士が支え合う機会を作るような手助けをする。例えば、高齢者や家族のいない人のケアなどを頼む。
  • その人の文化や宗教に関係した支援が得られるようにする。
  • 外国人には、その国の文化や慣習、宗教、スピリチュアルな信念などに配慮する。

④ 自立を支援し、自分で問題に対処できるよう手助けする。

  • 対処方法(簡単なリラックス法、怒りへの対処の仕方、睡眠など)について情報を提供する。
  • 両親あるいは養育者に対して、子供に特に配慮すべきことを概説する。
  • 衣食住に関わる問題を助ける。

⑤ 特別な配慮が必要な人は、必要に応じて、専門的な救助などの外部の支援を特定することを助ける。

  • 体の弱い高齢者、妊婦、重度の精神疾患、視覚や聴覚に困難を持つ方
  • 差別や暴力を受ける恐れがある人
  • ひどく苦しんでいる人

その状態が消えるまで、あるいは医療従事者や地元の指導者、地域の人たちからの援助が得られるまでは、一人にしない。

⑥ 外部の市区町村、専門機関などに情報提供する。

  • 現状、特に考慮すべき事項、ストレス反応、処置事項などについて、1H5Wで事実だけを簡潔に伝える。
  • できるだけ文章で情報提供する。(自治体等で様式が定まっている場合はそれに従う。)

4 特別な注意を必要とする可能性が高い人

■子ども(青年を含む)

●子ども特有のストレス反応

  • 幼児は赤ちゃん返り(おねしょ、指しゃぶりなど)をしたり、保護者につきまとったり、あまり遊ばなくなったり、悲惨な出来事に関係する遊びを繰り返したりする。
  • 学齢期の子どもは、自分が悪いことを引き起こしたと思い込んだり、新たな不安を感じるようになったり、あまり優しくなくなったり、孤独を感じたり、被災者の保護や救済ばかりに気をとられたりする。
  • 青年は何も感じなかったり、友人と違う、孤立していると感じたり、危険な行為や反抗的な態度を示したりすることがある。

●保護者が子どもを支えるためにできること

〇乳児

  • 温かさと安全を保つ。
  • 大きな音や混乱から遠ざける。
  • 寄り添ったり抱きしめたりする。
  • できる限り規則的な食事と睡眠のリズムを保つ。
  • 穏やかでやわらかい声で話す。

〇幼児・児童

  • いつもより気にかけ、子どもとの時間を増やす。
  • 安全であることを何度も言って聞かせる。
  • 悪いことが起きたのはあなたのせいではないと話す。
  • 保護者や兄弟姉妹、大切な人から引き離さない。
  • できるだけいつもどおりの生活習慣や時間を守る。
  • 何が起きたのかという質問には簡潔に答え、怖がらせるような詳しい話をしない。
  • 子どもが怯えたり、あなたにまとわりついたりするようであれば、そばにいさせる。
  • 指しゃぶりやおねしょなど、赤ちゃん返りをし始めても見守る。
  • できる限り、遊んだりリラックスしたりする機会をつくる。

〇児童・青年

  • 時間を作って向き合う。
  • ふだんの日課がこなせるように手助けする。
  • 何が起きたのか事実を伝え、今何が起きているのかを説明する。
  • 悲しむことを認める。強くあることを求めない。
  • 価値判断をせずに、子どもの考えや恐れに耳を傾ける。
  • 明確なルールや目標を設定する。
  • 子どもが向き合っている危険についてたずね、子どもを支え、どうすれば傷つけられずにすむか話し合う。
  • 自分自身が何かの役に立つよう励まし、そのための機会を与える。

●子どものために言うべきこと、すべきこと

  • 大切な人と一緒にいるようにする。
  • できる限り保護者や家族と一緒にいるようにする。
  • 同伴者がいない場合、信頼できる子どもを保護するネットワークや機関につなぐ。一人にしておかない。
  • 子どもを保護する機関がない場合、保護者を探すか、その子どものケアができる家族に連絡を取る手立てを講じる。
  • 安全を確保する。
  • 負傷者やひどい破壊など惨状を目にしないよう守る。
  • 起きた出来事について、動揺させるような話が耳に入らないようにする。
  • メディアや、危機対応を担うわけではなく話を聞きたがる人びとから子どもを守る。
  • 聴き、話し、遊ぶ。
  • 落ち着いて穏やかに話しかけ、優しく対応する。
  • 子どもたちの状況について子ども自身の考えを聞く。
  • 子どもの目の高さで話すようにして、子どもに分かる言葉や説明を用いる。
  • 名前を言って自己紹介をし、支援に来たことを伝える。
  • 保護者や他の家族を見つける手助けをするために、子どもの名前やどこから来たのかなどの情報を、できる限り調べる。
  • 保護者と一緒にいる場合は、子どものケアをする保護者を支える。
  • 子どもと一緒に時間を過ごす場合、子どもの年齢に応じて、一緒に遊んだり、子どもが関心を持っていることについての簡単なおしゃべりをしたりする。

■健康上の問題や、障害を持った人

健康状態に配慮が必要な人や障害を持つ人を支援するために、あなたが手助けできることには次のようなものがあります。

  • 安全な場所に移動する手助けをする。
  • 飲食、きれいな水の確保、自分のケアなどの、生きていく上での基本的ニーズを満たすことができるように手助けする。あるいは関係機関から供給された資材で避難場所をつくる手伝いをする。
  • 健康に問題がないか、何か定期的に服薬していた薬があったのかたずねる。薬の入手や、医療サービスが利用できる場合はその利用について手助けする。
  • 支援が必要な人に付き添う。その場を離れなければならないときには、代わりの支援者を確保する。長期的な支援を提供するためには、要支援者を保護機関か他の適切な支援につなぐ。
  • 利用可能な支援を受ける方法について情報を提供する。

■差別や暴力を受ける恐れがある人

  • 安全な居場所を見つける。
  • 大切な人や他の信頼できる人と連絡がとる。
  • 利用可能なサービスについて情報を提供し、必要なら支援に直接つなぐ。

5 緊急に専門的な支援を必要とする人

  • 命にかかわる重症を負い、救急医療が必要な人
  • 気が動揺して、自分自身や子どものケアができない人
  • 自傷の恐れがある人
  • 他の人を傷つける恐れがある人

6 支援の終了

  • 援助した相手にあなたが現場を去ることを説明し、別の人が支援を引き継ぐ場合には、その人を紹介します。
  • 必要な事項は、記録を残して引き継ぎます。
  • 自治体、専門家などとの調整事項
  • 定期的な訪問などの約束事
  • 服薬、経過観察などの継続事項
  • その人固有の特異事項(疾患、緊急連絡先、人間関係、習慣、信条など)
  • 相手の幸せを願うことで、前向きに別れを告げることができます。
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