20日~21日、現地支援に入っている御殿場市の杉本危機管理監に同行して、熱海市伊豆山の土石流災害の現場を視察させて頂きました。
視察場所は、市役所、ボランティアセンター、支援物資集積所、遺体処理所、板妻34連隊指揮所等。
現場は、人力による捜索に加え、16日から機械力が入ったところ。
板妻34連隊、大宮32連隊の中隊長が説明して下さいましたが、皆さん、暑い中、にこやかで、分かりやすく簡潔な説明が素晴らしく、頼もしく感じました。
⚫ 7月3日1030頃に発生した熱海市伊豆山の土石流災害(7月21日現在)
死者 19名
行方不明者 8名
損壊 131棟
⚫ 現場
人力による捜索が一段落し、昨日から、機械力による排土に着手したところ。
業者も入れるようになり、民力を使えるようになった。
土砂、瓦礫を排出した後、人員を捜索する。
重機の進入路。
赤い家がニュースの映像でよく流れていたもので、左手から右下に土石流が流れた。
中央部に砂利を敷き詰めて、上流側から重機の進入路を逐次に拡大。
赤い家の上流側が警察の捜索エリアで、まだ重機は入っていない。
砂利敷き中の道路から手前が自衛隊、向こう側が消防の捜索エリア。
捜索の当初から、捜索・救助活動責任者の植田消防長(自衛隊OB)から明確に捜索エリア(境界)を示されたので、活動しやすかった様子。自衛隊は、捜索の重視地域を担当したとの認識で奮闘。
この画面の自衛隊の捜索エリアは、100%完了。捜索100%完了エリアを拡大するように逐次に捜索地域を広げて、確実に捜索している。
毎日、対策本部の会議で捜索担当エリア間の調整(すり合わせ)をしている。
丁度、海との接点最下部方向に土砂が流れ、新幹線アンダーパスがある。
まだ重機が入らない下流域のエリア。
新幹線アンダーパス。向こう側に東海道本線のアンダーパスが見える。
そのすぐ海側に逢初橋がある。
新幹線アンダーパスから上流方向を見る。土石流は、この道路を流れてアンダーパスを通り抜けた。
逢初橋。源頼朝と北条政子が初めて出会った場所と伝えられる。
東海道本線のアンダーパスが見える。
鉄筋の入った非常に丈夫な欄干が割れている。
逢来橋の下流側。この建物の向こう4軒までの1~2階部分は土石流に洗われている。
窓から土石流が流れ出たことが分かる。
警察車両。さまざまな省庁のさまざまな車両が見られた。
熱海市の災害対策本部の指揮統制が難しいだろう。
捜索エリアへの報道や民間人の進入統制は、法務局矯正局が担当していた。刑務所での災害時に備えて、数年前に編制された組織だとのこと。
⚫ 支援物資集積所
災害規模が小さかったので、発災後2~3日で支援物資の受け入れを中止。
業者を入れて、搬出(配布?)作業中でした。
⚫ ボランティアセンター
3760名が登録。
昨日から限定的に活動を受け入れたところで、ちょうど運用等について検討中の様子でした。
⚫ 市役所
国(内閣府・防衛省・総務省・国交省/気象庁含む)、県、事業所 (東電・JRなど)が支援、配置されていました。
新しい庁舎で、機能的にできているが、これだけの支援者が入るには、やや手狭?
⚫ 遺体処理所
遺体処理施設に必要な要件等は、
・市街地から離れていること
・外部から見えないように処置できること
・車両の、搬入口と搬出口が別々に確保できることが望ましい
・水を使用(遺体、遺品等の洗い場)できること
・受付、検死、検案、遺体処置、遺体安置、行方不明者問い合わせ場所などが配置できること
・遺体安置、行方不明者問い合わせ場所は、検死等施設と離隔していること
葬祭業者により、遺体処置ができる業者と(経験がなくて)できない業者がある。
⚫ 板妻34連隊指揮所
防衛大臣等の視察が昨日あり、極めてしっかりと整えられている指揮所。
活動開始当初、白地図しかなく、被害地域の全容が把握できないまま捜索を開始したが、航空自衛隊のドローンで撮影した写真が役立ったとのこと。
現在は、国土地理院からの航空写真(7月6日撮影)が展開されている。
陸上自衛隊も第一線部隊がドローンを軽易に活用できるようにすることが必至だろう。
【所見/提言】
1 全般
熱海は、溶岩が固まった固い岩盤のうえに火山灰が降り積もった斜面に家が建てられていて、危ないと分かっていても、行き場所がない地域です。
「土砂災害警戒区域」に指定するは簡単だし、言うことも簡単なのですが、行き場所がないのに、住民に、むやみに危険を訴えるのも、無責任になるというのが、当局者の根本的な悩みではないでしょうか。
避難できる場所も限られています。高齢化していて、移動も難しい。旧い建物や老朽化した建物の建て替えには、相当な費用がかかります。
もともと地域意識の強い土地柄のようです。
開発規制をする。保安地や保安道路を整備していく。補助金を出して、安全な地域への建替や移転を促進するなどの総合的な施策をとりながら、別荘地、リゾートマンション等への新規居住者を含め、災害に対する住民意識をより高めていく。高齢者等に対する地域の共助態勢を充実していくことなどが必要でしょう。
そのなかで、今回の「盛り土」のような人為的な要因を排除することは不可欠です。
2 国の支援の在り方
あくまで災害対策基本法の役割分担に沿って、市町村が「住民の生命、財産を守る」役割を主導的に果たせるように、市町村の指揮下に入って、「支援することに徹する」ことが必要です。
国の機関(内閣府、法務省、国土交通省/気象庁、自衛隊(陸上、航空)、警察他)や指定公共機関などの支援の在り方についても、市町村との指揮関係(情報を含む)への配慮が不可欠です。
3 各種団体の支援と受け皿
日赤、災害支援ナース、DMAT(災害派遣医療チームDisaster Medical Assistance Team)、DPAT(災害派遣精神医療チームDisaster Psychiatric Assistance Team)、DWAT(公益社団法人全国老人福祉協議会・災害派遣福祉チーム)、一般社団法人日本DMORT(災害死亡者家族支援チーム:福知山列車脱線事故を契機に発足) 県災害救助犬の団体他、各種団体の支援があるとのこと。
その情報を集約して全般状況を把握し、災害対策本部の指揮(状況判断)に的確に反映させることができる組織態勢の整備が必要だと思われます。
4 市の危機管理組織
そのためには、それらを受け入れて、統制し、主導的に指揮できるようなトップダウンの危機管理組織を整備することが必要です。
地方の一地域の災害であっても、国の機関や指定公共機関が出てきて、救援活動や復旧を支援することが常態になっていますから、各部長を統制して市町村役場が一丸となって、トップダウンで動けるように、危機管理監の位置づけを見直すことが必要です。
現在は、(熱海市行政機構図を見ると)市民生活部長のしたに危機管理課-危機管理室があり、危機管理監の位置づけは不明確になっています。
地方の一地域の災害であっても、国の機関や指定公共機関が出てきて、救援活動や復旧を支援することが常態になっていますから、各部長を統制して市町村役場が一丸となって、トップダウンで動けるように、危機管理監及び危機管理課の位置づけを見直すことが必要です。
それに合わせて、人事及び人材育成を図る必要があるでしょう。