8月15日に、テレビのニュースを見ていて、ふとバルタン星人を思い出した。
ウルトラマンに出てくるバルタン星人。実は、まったくの悪者・侵略者だったのではない。
バルタン星人が地球を訪れたのは、故障した宇宙船の修理のためだった。
狂った科学者の行った核実験でバルタン星が壊滅したとき、たまたま身体をミクロ化して宇宙船に乗って旅行うぃしていた20億3,000万人のバルタン星人は、故郷を失い、宇宙をさまよう難民となってしまった。
彼らは、事情を説明して、地球への移住を交渉した。
バルタン星人にとっても地球は、とても住みやすい星だったのだ。
当初は、「地球の法律や文化を守るなら移住も不可能ではない」と、共存する姿勢を示したのだが、バルタン星人の人口の多さを聞いた地球防衛軍の隊員が難色を示した。
地球防衛軍に悪意はなかったのだろうが、自分たちの唯一の弱点であるスペシウムが溢れている星、火星への移住を提案され、死地に追いやられると思ったバルタン星人は交渉を一方的に打ち切り、地球への移住の強行することになる。
そして、ミクロ化したバルタン星人の乗っていた宇宙船が潜んでいるところをウルトラマンに発見され、宇宙まで運び出された後にスペシウム光線で爆破されてしまう。
これにより20億人以上のバルタン星人が死亡するが、わずかな生き残りのバルタン星人は、地球人への復讐と地球侵略への執念を抱くことになる。
戦争の種は、良いか悪いかだけでは計れないものがある。
生存をかけているから戦争になる。
バルタン星人の名前は、紛争の尽きることのなかった東欧のバルカン半島に由来する。
日本に原子爆弾が投下され、米ソは生き残りがかかっていると信じて、核兵器開発競争に勝利しようとしていて、太平洋では核実験が行われていた時代背景。
また、身の回りでは外来種のアメリカザリガニが、そこら中の川や沼にあふれていた。
難民の話だけでなく、すべてが、実にリアルな設定ではないか。
戦争を正面から取り上げて、戦う双方に正義があるというリアリズムで描かれるヒューマニズム。バルタン星人の一見、ユーモラスな動きにもそれが映し出されているように見えてくる。
見る者が知ってか知らずか、それを意識させられ、考えさせられる。
そういう奥深さのある物語だったからこそ、あれだけ多くのファンを惹きつけ、今もまた、愛され続けているのではないかと思う。
8月15日、薄っぺらな反戦平和のニュースを聞き、真正面から、戦いと人間を描き出していたウルトラマンとバルタン星人の、奥深いストーリーを思い出した。
やはり、時代を超えて残るものは違うのだと、改めて思う。シュワッチ!!