組織は、さまざまな役割の人たちの集合体ですから、機能の集団になります。

組織内に、個人の能力や適正に応じて、人を配置することを適材適所と言っているのですが、必ずしも常に適材を適所に配置できているわけではありません。

初めての仕事に就くことを考えるとすぐに分かるように、知りもしない職場で、最初から適材適所で仕事ができるなんて、世の中に、そんなうまい話はないのです。

いくら仕事を選びに選び抜いて選んでも本当のところ、本人だって、その職場がどんなものかは分かりません。

その場所やそこにいる人によって作られる個性や雰囲気というものがあるからです。ところと人が変われば、千差万別、さまざまに違います。

そこに入ってみなければ分からないものがあるのです。

受け入れる側も同じです。一次試験、二次試験と、どんなに試験を重ねても、その人の本当の姿は見えてきません。

プライベートなことを聞かれても、「個人情報」というベールが保護してくれる世の中です。試験は、自分をよりよく見せる場ですから、猫をかぶって、決して欠点をさらけ出さないようにするのが当たり前。

試験をする側は、優秀な者を採用したいが、誰が優秀なのかが区別がつかないときには、逆に、より不適合だと思われる者を外していく選択をすることになります。

「自衛隊は、人がたくさんいるから良いですね」とも言われますが、人数が多いか少ないかは問題ではありません。

「適材適所は分かるが、現実は違うのだ、適材がいないから悩んでいるのだ」という現場の声が実態を表しています。

「できる奴が欲しい」。管理者は皆、自分ができないことを棚に上げて、そう言います(笑)。

初めての仕事は、適材か適所か、判断出来ないのが当たり前です。

判断出来ないので、「たぶん大丈夫だろう」という確からしいと思われるところへ配置する、本人が希望するところへ配置する、あるいは、優秀だと思われる人を重要なポジションへ優先的に配置していく、ということをしていきます。

それが正解かどうかは、結局、そこへ配置された人が満足したかしなかったか、仕事に意義を見いだしたかどうかが、適材だと思うかどうかによって決まるのです。

世の中に山ほどある“やったことのない他の仕事”のことは、まったく知らないのですから自分にとって何が「適所」か、判断のしようがない。

それを適材適所で使っていないとか、人材を活かしていないとか言って、職場の上司だけの問題にしてしまうのは、本質から外れています。

本人がその仕事と職場を好きになるしかないのです。

職場を好きになれるのかなれないのか、好きになれない原因は何なのか。

職場の責任者(リーダー)の一番の仕事は、部下に充実感を感じられる仕事をさせ、部下が好きだと言える職場を作ることなのです。

そのために、仕事の意味や意義や目的を理解し、そして仕事を通じて、自分自身の進歩や成長を感じてもらう、リーダーと部下とのコラボレーション、共同作業だと思います。