何らかの事態が人間に影響を及ぼしたとき、「災害」と呼んでいます。
どのような現象が生じても、私たちに影響を及ぼすことがなければ「災害」とは呼びません。
人為的な原因で生じた戦争や事故や事件であっても、社会的なマイナスの影響が大きい障害をもたらしたときには「災害」と表現されます。
つまり災害か否かは、起こった現象が人間による制御ができる範囲内の事象かそうでないか(被害が生じたか否か)の結果によって決まることになります。
その範囲は、物理的な影響から心理的な影響まで、極めて幅広くとらえられています。
「災害」は、地震や洪水などの外的な要因(誘因)によって引き起こされ、それに耐えうる能力(防災力/素因)を超えた場合に生じます。
規模の小さな災害は起きる頻度が多いので、それに対処する能力が整えられることになりますし、対処能力が整えられれば整えられるほど、災害が起きる頻度は少なくなりますが、次に災害が生じたときの被害はより大きいものになります。
「災害は忘れた頃に来る」と言われる所以です。
災害対処の法的根拠となる災害対策基本法の第二条第一項には、「災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう」と、予想されるさまざまな被害に対応できるように、包括的に記載されています。
また、自然災害以外の次の5つの災害を「特殊災害」と定義しています。
・Chemical(化学) :化学兵器や有害物質の漏洩などの災害
・Biological(生物) :病原体や生物兵器による災害
・Radiological(放射性物質) :放射性物質の漏洩や原子力事故などの災害
・Nuclear(核) :核兵器を使ったテロ
・Explosive(爆発) :テロや事故による爆発
防災を考えるときには、これを基準に三区分で考えます。
- 自然災害
- 人為災害
- 特殊災害
災害対策基本法では、戦争を災害だとはとらえていませんが、冷戦後、世界中で起きている戦争、地域紛争やテロを考えると、時代のトレンドとして、戦争を人為災害から戦争を外すわけにはいきません。
国内法では、災害と戦争は別の法律で律せられているというだけの話です。
世界中に展開している経済活動、サプライチェーンの連環のなかにある日本企業等が、これだけ地政学リスクが大きく取り上げられているときに、日本の国内法を理由に、危機管理の思考の範囲から戦争を外すことは適切ではありません。
コロナなどの感染症も同様で、感染症への対策を考えれば厚生労働省の所管になりますが、社会全体への影響を考えれば、国家安全保障会議や企業の経営会議で方針を決定すべきものとなります。
そこで、災害防止研究所が取り上げる「災害」の理念の範疇には、戦争や感染症を含み、「災害」の本義である「人間や社会生活に悪い影響(被害)を与える可能性のあるもの」を含んで取り上げることにしました。
災害への対処(防災:災害の未然防止=準備、被害の拡大防止=対処、復旧)を考える際、最も重要な点は、以下の二点だと考えています。
- 災害対処能力(準備)によって、「災害」になるか否かが決まる
- 受け取り方(心理状況)によって、「災害」になることもならないこともある
私たちは「災害」が起きたときに備え、万が一のときにも、それを乗り越えて進む強い意思を持ち続けることが大切です。
そのためには、常にリスクとチャンスを考慮して行動する柔軟性が必要です。
災害防止研究所は、万が一に備えて、準備に全力を尽くすことが、私たちの成長と発展を産む源になるのだと考えています。