ニュースを見ていると、諸外国との共同訓練の目的や意義をどこにおいているのだろうか、と気になる。
敵ではないが、いつ敵になっても勝たなくてはいけない相手が、外国の軍隊だ。
各国軍隊は、それぞれに仮想敵国をもって訓練している。
自身の評価基準になりうる場だし、情報収集するには絶好の機会になる。
連携して戦う以前のことが目的だ。
一緒に訓練するから、仲良くなるわけではない。
政治的な意図があって、共同訓練の場を設けている。
例えば、冷戦時代は、作戦戦闘において奇襲を受けないように、作戦以下のレベルの戦術を確認するのが人事交流や共同訓練の主目的だった。
冷戦が終わると、政治と軍事との連携をどのようにしているのか、政治的意図が軍隊にどのように伝えられているのかを確認するために、大佐レベルの教育での人的交流が主体になり、作戦以下の戦術レベルの交流は低調になっていった。
米軍が日米共同訓練で新しく導入したシステムを丁寧に説明するので理由尋ねると、自衛隊は新しいシステムを器用に状況に適用し、改善して使いこなすので、それが戦闘開発や装備開発の面で大変参考になるのだと言っていた。
また、某国の軍隊への評価を尋ねると、微妙な評価が返ってきたことがある。とても信頼しているとは思えないのだ。おそらく政治的にも同じように判断しているのだろう。
自衛官、軍人は、常に、一緒に戦う価値のある軍隊かどうかの判断を念頭に置いている。
人間としての好き嫌いが出ることもある。
政治的な姿勢と現場の空気はつながっている。
共同訓練は、各国とも目的をもって参加し、情報収集する。
当然、高級幹部の交流では、政治と軍隊との意思疎通を確認するし、指揮官の資質や組織の現状の問題点などについても把握する。
訓練の場で、相対的に自分たちの実力(レベル)を知るのだが、問題は、情報収集して、生かせるかどうかにかかっている。
情報収集の範囲は、作戦・戦術・戦闘の考え方やノウハウから、部隊等の現状や実態の把握、隊員のスキルや質、同盟国との関係等々まで、非常に幅広い。
内輪(自衛隊)だけで訓練しているときには、経験と勘だけである程度の情報を吸収できる。また、軍隊間の作戦レベル以下の目的での交流ならば、自衛隊任せでも良いだろう。
しかし、多国間に共同訓練の範囲を広げ、18倍にまでしたのは、政治的な意図に基づいてのことであり、そういう意図をもってしていることであれば、それを活かす態勢の整備が必要だ。
共同訓練の成果を自国の政治、軍事での判断に取り入れるためには、情報収集・分析・評価するシステムや研究開発のシステムがいるということだ。
共同訓練をすることだけが目的であれば、政治的なパーフォーマンスでしかなく、隊員が汗をかくだけで終わってしまう。
目的のない訓練は、無駄でしかない。
軍事を政治に使うことはないと言いながら、多国間の共同訓練を命じているのだから、何のために訓練を命じているのか、共同訓練の先にあるものを明確に示すことは最高指揮官の責任だと思う。
以上