Ⅰ 消防の歴史
(1) 江戸時代
「火事と喧嘩は江戸の華」といわれるほど火事も頻繁に発生した江戸時代。
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日本の消防組織は江戸時代に始まった。1650年に江戸幕府が武家屋敷の火消組織として、2人の旗本を火消役に任命し、「定火消(じょうびけし)」という常設の消防組織をつくり、火消役の屋敷に役人や火消人足を備えさせた。さらに、1712年には、江戸城や武士の家を火事から守るため、譜代大名による消防隊「大名火消(だいみょうびけし)」が設けられた。
1718年、8代将軍吉宗が、南町奉行の大岡越前守忠相と大火対策を協議し、一般の町屋の消防態勢を整備させ、町人による「町火消」を編成させました。経費は町人の負担、組員は無報酬の、いわばボランティアの自警組織だったが、「いろは48組」や本所・深川の16組など、1万人以上が活躍していた。
(2) 明治時代
明治維新にともなって「定火消」や「大名火消」は廃止され、1872年「町火消」は東京府の「消防組」に改組された。
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1880年、内務省警視局に消防本部(東京消防庁の前身)を創設。翌年、消防事務は東京警視庁に移管され、これが明治時代の消防の基礎となった。しかし、全国的には公設の消防組は少なく、ほとんどが自治組織としての私設消防組で、しかも名前だけというのが実情であった。
そこで政府は、1894年「消防組規則」を制定。「消防組」を知事の警察権に入れ、消防制度を全国的に整備し、費用は市町村の負担とした。
(3) 大正時代
「消防組」は警察の補助的な役割も果たしながら整備された。当初、常設の消防組織が置かれたのは東京と大阪のみだったが、1919年「特設消防署規程」により京都市、神戸市、名古屋市、横浜市の4都市にも公設消防署が設置(特設消防署制度)された。
ここにきて消防事務は各府県が掌握することとなり、消防に従事する者は判任官待遇の消防手となった。
(4) 昭和時代(戦前)
昭和に入ると、国防上重要な都市の消防体制を強化するため、各都市に公設消防署が設置された。1939年には「警防団令」により「警防団」と名称を変えて「防空」の任務が加えられ、防空監視や空襲爆撃下の救護活動も担うことになった。
戦時中、公設消防署設置都市は36都市(3万人)に拡大した。
【まとめ】
江戸時代から戦前までの消防組織を概観すると、自警的な発想から生まれた組織が発展していったといっていいだろう。
自然な流れとして、地方自治体の役所の機能として公設消防署が設置されるようになり、それを補うように互助的な民間組織を充実していった。
消防の役割は治安維持の機能の一部としてとらえられていた。戦争間、地域の消火から防空、救護活動へと役割が拡大していった。