《フランス人の自意識、アイデンティティが伝わってきます。フランス人は自己顕示欲が強い、自己本位で我が強いという話を聞くことがありますが、自分を大切にして、好みをはっきり口に出して形に表すことが、個性(センス)を磨くことにつながり、オシャレになって現れたりするのでしょうか。 生活感のある話に、思わず頷いてしまいます。 》
フランス人は食事を大事にします。
私たちは調理場で、洗場さんと皆で食事をとっていました。その時の話題は、サッカーが3割、ラグビーが2割、車が2割、そして「もしも日本とフランスが戦争になったら、俺たちどうしよう」と、17~18歳で真剣に話していました。日本人にとっては非現実的な話かもしれませんが、長い間戦火にまみれたヨーロッパなので、彼らにとっては現実的な話なのです。だからEUができたのです。この話が2割で、女性の話が1割。仕事の話はしませんでした。
ホテルリッツでも食事中に仕事の話をしたことはありませんでした。
仕事の話は仕事のときにしていました。仕事と他の時間の使い方が上手だというか、ドミニックがよく言っていました。これは大袈裟ですが、「24はきれいに3で割れる。8時間寝て、8時間仕事をして、8時間遊ぶ」。
学校でもInterneアンテルヌ寄宿の子供とExterne通学の子供がいて、昼食を自宅に戻って食べてからもう一度学校に行く子供が結構いました。労働者も同じです。週末には家族や友人と集まって話をしながら昼食をとるのが一般的なフランス人で、食前酒を飲んでは語り、ワインを飲んでは語り、食後酒を楽しみます。
私の妹がフランスに来たので、友人を招いて食事会をしました。朝10時くらいから私は食前酒を飲みながら食事を用意し、11時頃に来た友人たちは食前酒を飲んでから、食事会に。食後酒が終わったのが夜の7時で、日本人の友人は驚いていました。そこでドミニックが一言、「これから、どこに食べに行こうか?」で、彼らはまたびっくり。これが私たちの日常でした。
一般のフランス人は、普段は質素で、週末を楽しみにしています。フランス人にとって外食をすることは非常に贅沢で、よく日本人観光客が「食事の量が多くて」と言われますが、非日常だから量が多くて、贅沢なのです。
多分、昔の日本旅館の料理のように、刺身から焼き魚、煮物、肉と、色々出てくるのと同じだと思います。こういうことはフランス人のなかで生活していて初めて分かることで、パリに、またはフランスにいるだけでは分からないことです。
皆さん、フランス人はお洒落だと思っている方が多いでしょうが、実際はそんなことはありません。お洒落に気を使うよりも、週末にサッカーや郊外でゆっくり過ごすことのほうにお金を使います。お洒落は、外国から来ている人たちが頑張っているのです。
もちろんフランス人のなかにもお洒落に気を使っている方々もいますし、確かに、流行り、廃りの流行はありますが、日本人ほど流行を追いません。第一、フランス人は、人に決められることを好みません。レストランでコースメニューを注文する方は本当に少数です。
1974年くらいから始まったNouvelle Cuisineヌーベル・キュイジヌで、Menu Degustationムニュー・デギュスタシオンと言って、皿盛りのコースメニューが流行りましたが、あっという間に終わってしまいました。
フランス人にとって、1789年の大革命によって、自分たちの手で生活を取り戻したことに誇りを持っているのでしょう。
だから自分で決めるのです。