函南町は、その名の通り、箱根(別名、函嶺)の南に位置する。

箱根山の南西麓(標高約1000m)と、そこから南へと続く丹那山地の山稜西側の丘陵地、丹那盆地。天城山を源流とする狩野川が流れ込む平野部で、箱根山系からの来光川、柿沢川と合流する。その田方平野の一角を町域として市街地が発達、人口(約3.7万人)の約60%が居住している。近隣都市のベッドタウン的性格を持つ。

地形上の特性から、函南町の災害対策の焦点は、①地震・液状化、②地震・土砂災害、③洪水・土砂災害。

昭和33年の狩野川台風以来、放水路が逐次に整備されたが、地形の特性に加え、田畑の市街地化から、内水氾濫の危険性が増大している。特に、海水面の潮位が高いとき、狩野川放水路の排水能力が下がり、内水氾濫を起こしやすい。

町民に配布されている『防災マップ』は、町民に必要な防災準備、洪水避難マップ等がコンパクトにまとめられていて、とても使いやすく、分かりやすい。例えば、避難場所への方向が矢印で示されていて、避難行動がイメージアップできるところが素晴らしい。

昨年の台風19号では、「周辺地域の雨量が異常に多い」という気象情報と天気予報で洪水災害を予測し、まだほとんど雨が降っていなかった10月11日(金)1530の段階で“避難準備・高齢者等避難開始”を発令、1700までには6カ所の指定避難所を開設して、明るいうちに住民を避難させることができた。

危機管理スタッフの的確な情報分析による意見具申と、「役場(町)のことは俺が一番知っている」というほど実務に通じている町長の的確な状況判断が円滑な対応を可能にした、という。 

今後の課題は、人口の30%を越える要配慮者の避難支援、救護体制の整備等。