選挙で当選した新しい市長が着任した。
経営者が交代した。
人事異動でまったく知らない上司が着任した。
問題が山積していて、どこから仕事に手をつけたら良いのか分からない。
情勢が変化して、方針がまったく変わってしまった。
上司が何を考えているのか分からないので、自分の考えはあるけれども、それをいきなり上司にぶつけるわけにもいかない。
こういう担当者の悩みは、どこにでも、いつでもあることです。
上司もまた、同じように悩んでいます。
全体像、各部署の役割分担が、よく把握できない。
部下がやっている仕事で、何が重要なのか、何が焦点なのか、理解できない。
知らない、分からないとは、言えない。
こんなことを質問したら、馬鹿にされるのではないか。
報告して欲しいが、何も言ってこない。
・・・・
しかし、自信があるように見せるのがリーダーだ、リーダーが不安そうにしていたら組織全体が自信をなくしてしまう、などと考えて、何でも知っていて、強そうに見せたがり、素直になれないのが、上司。
部下は部下で、下手に突っ込まれて、墓穴を掘ってはいけないと、用心して予防線を張り、警戒しますし、上司は上司で、最初に舐められたり、足下を見られたりしてはいけないなどと考えます。
トップ・リーダーは、(恒常業務では情報量が多いので、)すべてを分かっていて当然だと思われがちですが、必ずしもそうではありません。
経験のあるなしもあれば、人間だから、関心の有無も、得手不得手もあります。
大きな組織になればなるほど、各部門の専門性が高くなりますし、それぞれの個別の事情があり、属人的な要素も強く絡んできますから、すべてを一人で判断することは難しくなります。説明できないようなしがらみがあれば、無理な力を加えずに、流れに任せたくなってしまいます。
バシッと決めて、リーダーらしいところを見せたいと思っても、決めていいのかどうか、迷います。
優秀な部下というものは、上司に無用な心配をかけないように、大抵、誤解を招きそうなことは、しゃべらないか、オブラードに包むか、当たり前のようにサラッと流して報告してしまうものですから、なかなか実態が把握できない(笑)。
何か忘れているのではないか、何か抜けているのではないか、不安になります。
この極めて真面目かつ正直な善意の人の抱える不安感を理解せず、上司は、すべてを理解して的確に判断するものだとか、部下は包み隠さず、キチンと報告するのが仕事だなどと、勝手に思い込んでいるとストレスが溜まります。
またそれを悪意があって隠していると思い込むと、相互不信につながります。
陸上自衛隊では、そうならないように指揮官と幕僚、それぞれの在り方や心得を定め、組織内のコミュニケーショ・システムとして「報告と通報」について規定しています。
当たり前に過ぎる結論になってしまうのですが、トップ・リーダーと補佐する部下との信頼関係の強さとコミュニケーションの良さが、危機に強い組織を作ります。