某警備会社の社長にお話しを伺う機会がありました。
警備業は、1962年の東京オリンピックを契機に、初めて警備会社が登場(現:大日警)して以来、右肩上がりの業界で、2019現在、9700社、55万人。
警備業界の現状とともに、技術の進歩に伴い警備業界が大きく変わりつつあることをお聞きしました。特に、この1年延期になった東京オリンピックは、警備業界に大きなニーズとIT化の推進をもたらしているようです。
中国のコロナ対策で画像認識システムが使われているニュースを見たとき、日本で顔認証システムが一般化するのはもう少し先の話だろうと思っていましたが、警備システム(防犯カメラ)には既に取り組まれているとのこと。
技術の進歩ととともに犯罪の形態が多様化して行く。それを防止したり、取り締まったりする手段も変化していく。IT化が進み、AIが導入され、ロボット化が進む。世の中のニーズが拡大するなか、少子化が進んで人手が足らなくなると、それに拍車がかかる。時代の動きに先んじて対策をとっていかなければ警備ができなくなってしまう。
また、防犯は警察の仕事になっていますが、犯罪になるかならないか分からない警備を民間業者が担うのは当然の成り行きで、警備業界が、量的にも、質的にも、右肩上がりに発展していく成長産業だというのは時代の必然的な流れだと分かりました。テロ対策や個人警護は、情報産業でもあり、特殊技能の集約された産業でもあります。
余談になりますが、外国人が増えてきたから犯罪が増えたとか、日本は安全安心な国なのに国際化してきたから犯罪が増えたとかいう人がいますが、自分自身の発想が技術の進歩や世の中の変化に追いつけない人が、そう思い込みたいだけかもしれません。そういう思い込みとは関係なく、警備のニーズは変化し、膨らんでいます。
犯罪もその対抗手段も、人間性や国民性に関わりなく技術の発展とともに進化し、複雑化していきます。IT化などで、顔を露出せず、誰にも知られずに、簡単に、犯罪行為に手を染めることができるようになったことや、影響の重大さや広がりを直接認識できないことも、警備やセキュリティが重視されるようになった大きな要因でしょう。
日本人の善き倫理観を維持していきたいのは当然として、セキュリティの必要性や安全・安心は、別の要因で動いています。
情報化時代は、規模がものをいう、マスの時代でもあります。しっかりしたビジョンを持った企業が技術やノウハウの情報を蓄積して生き残り、それなりの規模に集約、再編されて、規模の情報効果を活かした企業が発展していきます。脅威を先取りして、対応手段を磨くのは、軍隊も同じですが、急激で、非常に早い社会環境の変化や移ろいやすい消費者ニーズを先取りする必死の努力は、危機管理の感性をより研ぎ澄まします。
バブル前の「企業戦士」がもてはやされた時代、民間企業が、時代の荒波の最先端で戦っているのだという気概を強く持っていて、自衛隊が企業に学ぼうとしていた時代があったことを思い出しました。右肩上がりの激しい競争時代を生きている者は、皆、同じ意識なのかもしれません。
今回は、同じ災害でも自然災害ではなく人為災害が話の中心で、つまるところ「変化の時代を生き抜く」お話をお聞きしました。