《異常気象が続くようになると、異常気象が異常ではない状態、日常のものになってきました。

災害の備えが、日常のものにならなくては対処できないのですが、まだまだ人の意識は追いついていない状態。災害には「特別に備えなくてはいけない」状態から抜け切れていません。

基本も同じで、最も日常的に使われ、使う頻度が多く、さまざまなものに応用が利くものなのですが、ついつい変わったものや目立つものに目を奪われてしまい、当たり前であるものには目が向かなくなってしまいます。 何気ない「縦線、横線の話」に、関心が向くところが、流石です。 》

やはり長いお客様のお話です。

うちは何でも長いので、例1、店は120年。例2、犬のヨークシアは親子ともども17歳と18歳。例3、お祭りで取ってきた金魚は14~15cmで、何年か覚えていない。例4、祖母94歳、母85歳、父97歳で、あと2か月で98歳でした。

こちらのお客様とのお付き合いは、ご両親様の時代から、たぶん5~60年だと思います。取材でブラジルに行かれたときに現地でお世話になった移民一世の方が日本に来られたときに和食にご招待しようと思っていたら、一世の方が「フランス料理が食べたい」とのことで手前どものところにお見えになりました。放送関係のお仕事をなさっていて、話が面白く、その一世の方のブラジル有る、有るです。

現地の人と結婚してできた二世の人たちは美人美男が多いとのこと。そして三世になると劣性に遺伝子が出てきて・・・と。本当かな?

ブラジルのコーヒーは不味くて、だからたくさん砂糖を入れて飲むので20歳代で入れ歯の人が多いとのこと。これは別のお客様からも聞きました。それはなぜかというと、良いコーヒーはみんな輸出してしまうからだそうで、これは佐渡のお客様が「良い魚はみんな築地に持っていかれる」と言っていたのと同じです。

このお客様のお住まいは、建築家のご友人と4人で10年間の構想を練り、お金を貯めて共同住宅、いわゆるマンションを作って生活しておられました。場所は、将来何かあったときのことを考慮し、ある総合病院の前にしたのです。奥様が妊娠されたとき、悪阻がひどくて歩けずにタクシーを止めて頼み込んで5~60mを運んでもらったそうで、このときはどうしようかと思った、と云っておられました。

また食事がとれず、2月真冬にスイカが食べたいと、都内の有名果物店に行ってもなく、たまたま別の話で手前共に来られたときに近くのスーパーで小玉スイカを見つけ、喜んでおられました。

このご友人たちと作られたマンションで一番気をつけたことは、火災と地震だそうで、色々と調べ、見て歩き、作られました。入居してから1年後、その建物の環境に慣れた頃、地震が起きた設定で避難訓練をしたところ、これがさんさんたる状況で、思うとおりに動けなかったそうです。

それは、あくまで机上の計画であったこと。それも男4人だけの話し合いだったため、各家庭の変化、話していた当時は独身の方がおられたり、まだ子供がいなかったり、ペットのことなど状況の変化が考えられていなかったことが理由で、各家庭の長がその変化を吸収できずに行われたため、実際に行動してみると、的確な指示ができずに、初動の3分で避難ができなかったのだそうです。

その内容は第一に、室内の安全なところに身を移動するが、実際は揺れていないので緊迫感がないのはしょうがないのですが、タンスの前から退くとか、すぐにガスを止めるとかが意外にできなかったそうで、地震に慣れっこになっているのが原因ではないかとおっしゃっていました。

これから出た結論は、細かいことはいいから、とにかく身の安全が第一、身が安全ならば次がある、だそうです。私もそう思いました。そして年に1回は家族で話し合って、約束事を決めておくのが良いと。

そう、ここで前回の続きなのですが、ある書家の先生の一番はじめの指導が「縦線と横線を真っ直ぐに書くこと」なのだそうです。この話を聞いたときに、「わ~、すごく難しいことをさせるね~」と思いました。「点から始まる連続なので、これができれば、止め、払いも返しもできるようになる」と聞き、流石、すごい先生だと思いました。

同じように、オートバイ仲間の一人で録音技師の友人が、ジムカーナ(曲がりくねったコースのタイムトライアル)で当時日本一のT氏に誘われて彼の練習会に参加するようになり、メキメキ早くなり、ビックリしたことがありました。この友人に、「どんな練習をしているの?」と聞くと、最初は発信、停止だそうで、びっくり。

オートバイにまたがり、ゆっくりアクセルを開けながらクラッチを繋ぎ、動き出したら地面についていた左足をステップに乗せ、1~2m動いたら右足の後輪ブレーキから静かにかけて、動いたことによって後輪に懸かっていた荷重を前輪に移してから右手のブレーキをゆっくりかけて止まり、ゆっくりと左足をステップから外して着地して止まりきる。

これを繰り返しながら、色々なことの確認をしているのだそうです。

先ず、自分自身の体調、バイクの調子、特に季候、タイヤの状態、そして着座の位置がバイクの中心に乗っているかなど。先ほどの書家の先生と同じで、少しずつ速度を上げてアクセル全開、ブレーキ最大まで行う。そして、曲がるときも同じ練習をするというのです。

どの分野でも、超一流の方々は、最初の基本を大事になさっていて、その積み重ねの上に成り立っているのだ、と思いました。