人口127,817人(平成27年国勢調査)。
三重県の中東部、伊勢平野の南端部にある比較的温暖な気候の都市。
北は伊勢湾に面し、中央には宮川(みやがわ)や五十鈴川(いすずがわ)、勢田川(せたがわ)が流れる。東から南にかけては朝熊岳(あさまだけ)、神路山(かみじやま)、前山(まえやま)、鷲嶺(しゅうれい)が連なり、西には大仏山(だいぶつやま)丘陵が広がる。
伊勢志摩国立公園の玄関口として、豊かな自然に恵まれ、古くから「お伊勢さん」「日本人の心のふるさと」と呼び親しまれてきた伊勢神宮を擁し、神宮御鎮座のまちとして栄えてきた。丘陵地帯に広がる伊勢神宮の聖域(後背地域を含み)を保全することが求められている。
Q 伊勢市の防災上の焦点は、何ですか?
A 平野部の国道23号線付近までは、標高2m以下の地域が広がる。台風、豪雨による水害、南海トラフ地震の津波対策が焦点。
平成29年の台風21号の際には、浸水被害が1800棟にも及びました。
宮川(みやがわ)や五十鈴川(いすずがわ)、勢田川(せたがわ)の氾濫だけではなく、内水被害の危険性も大きくなっています。
Q 避難場所はどうなっていますか?
A 津波からの避難に対して、市内の沿岸部7カ所に避難タワー、避難用のマウンド1カ所を整備して、ハード面での整備が完成し、「生命を守る」施策は一段落。現在は、「生命をつなぐ」ソフト面での施策に重点を置いている。
Q 避難タワー、マウンドがどのようなものかの概要を教えてください。
A 地震発生後30分以内に、半径750mで避難する場所がない地域に、平成26年~30年の間に、整備しました。
1カ所は、地域住民からの、避難タワーよりもマウンドの方が良いという要望により、マウンドを設置しました。
※youtubeで紹介されています。
Q 避難タワーの所要数は足りているのですか。避難所運営や管理はどのようになっていますか。
A 1カ所で400~1800人程度の収容能力で、所要数は計算して建てています。
警報が出て直ぐの避難になりますので、自主防災会に任せざるを得ません。備蓄品は避難者が自由に使えるようにしています。
役所が管理などに、どこまで関わることができるのかは限界がありますが、古くからのコミュニティが発達している地域ですので、人員の掌握や管理は、任せていて、大丈夫だろうと思っています。
ただ、沿岸部は、若い人たちは市街地の中心部などに働きに出ていますので、昼間人口が少ないので、高齢者対策、要配慮者の避難は大きな課題です。
東日本大震災以降、津波の危険性を意識して企業誘致を目的として整備した高台の企業団地地域に、いつの間にか、沿岸部の企業が移転してしまったこと、東日本大震災以降、津波の危険性を意識して移住する人たちが増えたので、沿岸部の過疎化と高齢化が進んでしまいました。
国や県が、港湾地域のインフラ整備をしっかり進めてくれているので、ハード面での整備は、以前よりも行き届いています。
Q 避難タワーは一時避難場所だと思いますが、二次避難の受け入れや対策は、どのようになっていますか。避難所の運営は、自主防災会等に任されているとのことでしたが、管理、運営は、大丈夫でしょうか。
A 浸水地域以外の避難所で受け入れるように考えていますが、避難所の運営等は自主防災会など地域住民と一緒に検討しており、ソフト面での「生命をつなぐ」施策の推進が必要だと思っています。
Q 高速道路、幹線道が確保されていて良いと思いますが、支援物資の物流はどのように考えられているのでしょうか。
A 国道に隣接する安全な地域にある伊勢志摩総合地方卸売市場を伊勢市の物流拠点にしています。物資チームを編成するが、物流を担うだけの人数や能力は持っていないので、実際の物流は企業と協定を結んで実施します。
県の物流拠点がヘリポートが整備されている県営アリーナ地域に設けられ、そこから各地域の物流拠点までは、県が支援物資を輸送するように計画されています。
Q 備蓄物資はどのように整備されていますか。
A 市は、食糧1日分を整備しています。補助金を出して、地域毎に整備してもらっています。市役所でできることには限界がありますので、各家庭での自助を促すよう、お願いしています。
Q 自主防災会の役割が非常に大きく、市役所として、市の防災施策の周知、防災意識を普及することが非常に重要だと思うのですが、自主防災会の組織化はどのような努力をされているのでしょうか。
また、現在、力を入れられているソフト面での防災対策について教えてください。
A 地域からの要望に応じ、また、企業、学校を通じて普及していますが、地域毎に、防災意識はかなりバラツキがあります。
伊勢市防災大学という施策を3年前からしていて、約40名の希望者に7~8回/年の研修を実施し、修了証を発行しています。
防災コーディネーターという名称で、防災士の資格を持つ方をボランティアで募集し、登録する制度もあります。伊勢市防災大学修了者にも登録を期待しています。
Q 危機管理課の現況、市の災害対策本部はどのようになっていますか。
A 危機管理課の防災担当約15名が、災害対策本部の基幹要員になります。
伊勢市防災センターが、平成27年、市役所から約2.5km離れた場所に完成し、そこに災害対策本部を開設します。市役所の現員が約800名で、市長以下約200名が伊勢市防災センターの災害対策本部に入ります。
伊勢市防災センターには、伊勢市消防本部を併設しています。
【後記】
説明を受けた後、防災センターを訪問した。
市役所で説明を聞いた際には、市役所と防災センターが2.5km離れた場所に位置していて、市長以下200名が防災センターに入って災害対策本部を設けるという話に、「現実的には、運用が難しい」と思ったが、防災センターを視察して、案内していただき、認識が一変した。
伊勢市防災センターは、伊勢志摩サミット時、最新の制震構造を備えて建設された施設で、おそらく非常時の指揮統制、通信連絡等のシステムを持ってくることができるように設計されたもので、堅牢かつシンプルな作り。
平時から消防本部が位置しているので災害時の情報共有にすぐれているのが強みで、かつ非常に使いやすい構造になっている。屋上に発電設備が設けられ、4Fには200名が入るシンプルな構造の大講堂的なスペース。3階は、防災体験学習室等の研修施設になっていて、非常時は予備スペースとして使える。子供たちの体験学習(津波の大画面映像、火災の煙体験室、水没車両の体験車両、流水のなかでの歩行の模擬体験、避難用持ち出し荷物の重量体験等)ができる施設で、大人も十分に楽しめる。2階には消防本部があり、災害対策本部長等が入る他、会議室等の余裕がある。1階は備蓄倉庫。
あとは職員の実行動を伴う訓練が重要だということになるのだが、どこの自治体でも一番頭が痛いのは、管理職以外の職員には、時間外手当てを支給しなくてはいけないので、訓練のための予算措置ができるかどうかの問題。
これはどこの自治体も抱えている深刻な悩みで、災害対策本部訓練の計画と予算を国が認める制度を整備する必要があると思う。