2 3つのホルモン
■オキシトシン
オキシトシンは別名「幸せホルモン」と呼ばれています。
人間は群れのメンバー間で洗練されたコミュニケーション手段を発達させ、協力的な行動や群れの統制を図ることで個々の生存確率を高めてきました。現代社会においては集団生活の社会階層によるストレスが生じていますが、一方で、集団生活こそがストレスを緩衝させるオキシトシンを分泌させる要素でもあるのです。
○オキシトシンを増やす
人とコミュニケーションをとること、例えば面と向かって話したり、電話で話したりする機会でも脳内でオキシトシンが分泌され、ストレスが緩和される作用があることが証明されています。
また、人とスキンシップをするとオキシトシンが分泌されます。握手する、肩たたきなども効果があります。
特に、人助けをすると、オキシトシンが分泌されて、幸福感が増すと言われています。いわゆる「ヘルパーズ・ハイ」と呼ばれるものです。
■セロトニン
セロトニンは、ストレスの緩和に関係します。人間の身体の理想的な覚醒状況をコントロールするのに重要な役割を担い、平常心を維持します。
セロトニンが不足すると、感情がうまくコントロールできず、イライラしたり不安感につながったりします。また、セロトニンは自律神経のバランスをとり、交感神経から副交感神経への切り替えをスムーズに行い、交感神経の適度な興奮を維持します。
また、セロトニンは、「抗重力筋」に刺激を与えています。「抗重力筋」とは、姿勢を維持する筋肉やまぶたや顔の筋肉など、文字通り、重力に逆らって働く筋肉で、寝ているときは弛緩して休み、目覚めると持続的に収縮して姿勢や表情を引き締める働きをします。
このような働きをするセロトニンの減少は、うつ病や自律神経失調症の原因になります。
実は、女性ホルモンとセロトニンには深い関係があります。月経周期によって女性ホルモンが下がるときにセロトニン分泌も低下してしまうからです。それで、更年期や産後は女性ホルモンの変動幅が大きく、特にうつ病になりやすくなります。
○セロトニンを増やす
「太陽の光を浴びる」または「明るい環境にいる」ことが大切で、光を「浴びる」「浴びない」のサイクルが、セロトニン分泌の促進に寄与していると考えられています。
朝の日光照射がセロトニンを増やします。
北欧など、冬に極端に日照時間が短くなる地域に多く見られる「冬季うつ病」、この患者を例えば、患者を南イタリアの太陽が燦々と降り注ぐところへ連れて行くと、それだけで回復してしまうのがこれです。
単純で、リズミカルな有酸素運動は、セロトニン分泌を促すことが知られています。
リズム性の運動とは、例えば、同じ動作をひたすら繰り返すこと、例えば、ウォーキング、ランニング、サイクリング、エアロバイク、水泳、ダンスなどです。
リズム運動は一定のリズムを身体が刻みさえすれば良いのですから、腹式呼吸、ヨガ、太極拳、お経をあげたり念仏を唱えたりすることも呼吸を意識して行うことなので、立派なリズム運動だと言えます。
イライラした時にガムを噛みながら仕事をすることは感情をコントロールする点で有益と考えられ、無理に激しい運動をする必要はありません。
食べ物をゆっくりよく噛んで食べることや仲間と楽しめるゲーム性のある運動が身体に良いことは、もちろんです。
■メラトニン
メラトニンは夜になると脳内で分泌される、良質の睡眠を導くためには欠かせないものです。メラトニンは、副交感神経の働きを高め、血圧を下げたり深部体温を低下させたりして、眠りにつきやすい状態を作り出します。
睡眠の質が良くなると成長ホルモンが分泌され、身体の修復がすすみ、疲労回復や翌日のパフォーマンス向上に直結します。
○メラトニンを増やす
朝の光がセロトニンを増やすのに対して、太陽が沈み暗くなるとセロトニンからメラトニンが作り出されます。そのため、昼間のセロトニン活性がうまく働かないとメラトニンの分泌にも影響がおよび、良質な睡眠が取れなくなります。
オキシトシンとセロトニンを日中にしっかり分泌させ、夜メラトニンを分泌させることで睡眠の質が良くなります。寝る前の半身浴や瞑想など、副交感神経を活性化しメラトニンの効きやすい状態を作ります。メラトニン分泌を促すために、寝る前の光の暴露には敏感になりましょう。
3 脳内伝達物質のコントロール
よく寝ることが次の日のパフォーマンスを良くすることは誰もが経験していることですが、そのための準備は朝起きたときから始まっています。
オキシトシン、セロトニン、メラトニンの分泌は相互に影響を与えているので、日常生活において、頻繁にコミュニケーションを取る、光を浴びる・浴びない時間帯を作る、リズム運動を意識することを心がけてみてください。
一連のホルモン分泌を整えると、特別なことをしなくてもココロとカラダのパフォーマンスが向上します。