2 職場つくりのポイント(要素)
米国ネブラスカ大学リンカーン校で「強み」をベースとする心理学の研究をしていたドナルド・クリフトン博士は、1969年にSRI(Selection Reserch Inc.)という研究機関を立ち上げ、ビジネス界で成功する個人や組織の研究を開始し、人々が能力を発揮して成果を作り出す環境つくりに寄与する要素は何かを探求しました。
1988年にSRIがギャラップ社と合併し、その研究成果を元にして具体的な調査手法(質問票)を開発しました。ギャラップ社は、会社や仕事に対するエンゲージメント(愛着心)の調査項目を挙げ、世界中の企業、1300万人以上に対する調査分析を行って作り上げたのが次の12項目の質問票です。
- 自分が仕事で何を期待されているか理解している
- 仕事を適切に行うのに必要な資料や備品を与えられている
- 職場で、自分が最も得意なことをする機会が毎日ある
- 過去7日間の中で、良い仕事をしたと認められたり、褒められたりした
- 上司または職場の誰かが、自分を一人の人間として気にかけてくれている
- 職場で、私の成長を促してくれる人がいる
- 仕事において自分の意見が尊重されている
- 会社の使命や目的を読むと、自分の仕事が重要なものだと感じさせてくれる
- 同僚たちが質の高い仕事をしようとコミットしている
- 職場に親友がいる
- 過去半年間に、職場の誰かが自分の成長度合いについて話してくれた
- 過去1年間に、仕事で学びや成長の機会が得られた
12問の基本的要素として、「組織における能力の最大化の理論」を表した、以下の方程式の要素が織り込まれています。
1人当たりの生産性=能力×(人間関係+適切な期待+承認・褒賞)
⑥・⑨・⑩は「人間関係」に関する質問、①・⑥・⑪は「期待」に関する質問、④・⑦は「承認・褒賞」に関する質問です。「期待」に対する「承認・褒賞」という具体的な行動はエンゲージメントを強くします。③は「強み」についての質問です。
人は、自分の「強み」を発揮しているときに、最も充実感を感じ、集中することができるものです。⑧は「何のために」自分がその仕事をやるかという目的、仕事の意味、意義を問うています。
同時に、①、⑥、⑧、⑨、⑪、⑫は、仕事に対して、自分を越えたもっと大きなものに意義を見出し、使命感を持って従事する、というニュアンスが表れています。
つまり、生産性の高い職場を実現するには、会社や仕事に対する愛着心の源として、「人間関係」を重視し、「強み」「意味、意義」に働きかけることが重要だ、ということになります。
逆に、これらに配慮することにより、レジリエンスが強い、良い人間関係を保った、生産性の高い仕事をする職場を作ることができる、ということだと思います。
ちなみに、シャウフェリ教授が開発したワークエンゲージメント尺度は、次の9項目を質問項目に挙げています。
- 職場では、エネルギーが満ち溢れているように感じる
- 職場では、元気が出て精力的になるように感じる
- 私は自分の仕事に熱心である
- 私の仕事は、私に創造的刺激を与えてくれている
- 朝、目が覚めると、さあ仕事に行こうという気持ちになる
- 一生懸命仕事をしているとき、幸せだと感じる
- 自分がやっている仕事に誇りを感じる
- 私は自分の仕事にのめりこんでいると思う
- 仕事をしていると、ノリノリの気分になる
これが実現できている職場は、レジリエンスが必要だなどとは微塵も感じさせない、とても魅力的な職場だと思われますが、果たしてあなたの職場はいかがでしょうか。