1 目標と基本姿勢

被災者に対するメンタルケアは、医療関係者だけではなく、最初に被災者に接した人たちが担わざるを得ません。

適切に状況を把握し、思いやりをもって話を聞き、できるだけ速やかに専門家につなぐことが、被災者のストレスを和らげ、心を落ち着かせて、心理的に保護し、さまざまな援助のためのコミュニケーションを円滑にします。

災害によって急激なストレスを感じている人たちに適切に接することによって、被災者の適応能力を引き出し、問題解決力を高めます。

被災者個人の実用的な援助をしながら、社会的支援につなぐことにより、地域全体の短期的、中長期的な支援活動を円滑にします。

■目標

① 長期的な回復を図る。

② 自立と意欲を促す。

③ 地域コミュニティのつながりを回復する。

④ 市区町村との信頼を強化する。

⑤ 社会的な支援を受けられることや共助の有り難さを実感してもらう。

⑥ 安心と希望を感じてもらう。

■基本姿勢

① 基礎自治体の機能を支援する。

② 公的支援に対する信頼感を与える。

・被災地全般の緊急対応策を把握する。

・支援を断った場合でも、のちに支援を受けることができることを伝える。

③ 被災者の尊厳、プライバシーを尊重する。

・無理に話をさせない。

・被災者の意思決定を行う権利を尊重する。

④ 家族や友人、地域の人々とのつながりを意識させる。

⑤ 地域住民の意思を尊重する。

⑥ 倫理的に行動する。

・信頼されるように、誠実に接する。

・できない約束をしない。

・誤った情報を伝えたりしない。

⑦ 被災者を中心に考えて、献身的に行動する。

・支援者が、他者のために「行動すること」は、被災地域以外の人々が通常体験する傷つきや無力感、憤怒への予防にもなる。献身的な態度、勇気、人間の優しさに接することは、深く、永続的な効果を与える。

⑧ 支援者は、被災者の目に晒されぬよう適宜離れ、適切な休息、睡眠、栄養をとる。

・自分たちの個人的な欲求をないがしろにすると、共感による疲弊や燃え尽き状態が起きる。

2 被災地における活動の原則

■事前に調べておくこと

① 災害の概要

・いつ、どこで、何が起きて、どのような人が何人、被害に巻き込まれたのか

② 支援活動の概要

・医療や食料、水などの配給、避難場所、家族の捜索などについて、どこで、どうすれば、支援が受けられるのか

③ 安全情報など

・余震、二次災害の可能性、立ち入り禁止区域の有無、治安状況など

活動の原則

① 災害対策本部の指示に従う。

② 市区町村、自治体や地域の社会集団を通して活動する。

③ 公的な捜索・救助隊や緊急医療チームの活動に協力する。

④ 自分の役割とその限界をわきまえる。

⑤ 安全に関する情報は、速やかに関係者に伝達する。

⑥ できるだけ速やかに、社会支援ネットワークにつなぐ。

■コミュニケーションの原則

  •  被災者が抱く怖れ、不安、疑念などに耳を傾け、忍耐強く、冷静に聞き、人間関係をつくる。

被災者は、あなたが知っていることに気を留める前に、あなたが気にかけてくれていることを知りたいのである。

・気遣い、共感、思いやりのある信頼のおける発言をする。

・相手に伝わるように、うなずいたり、相づちを打ったりする。

・沈黙を受け入れる。 

・人びとの気持ちや、話に出たあらゆる損失や重大な出来事(家屋の損失、大切な人の死など)をしっかりと受け止める。

・正直で、道徳的で、率直で、公平に接する。

・話すことを無理強いしない。

・話をさえぎったり、急がせたりしない。

・被災者がしたことや感じていることについて価値判断や議論しない。

・否定的な言葉で話さない。

② 安心感を与える。

・落ち着かせる

・勇気づけて、励ます。

③ 行動を通してあなたの発言を裏付ける。

・言語的メッセージと非言語的メッセージに、矛盾や食い違いが生じないようにする。

・できない約束や、うわべだけの気休めを言わない。

⑤ 必要な情報を、簡潔に、伝える。

・災害によってもたらされる現実的なリスク

・タイムリーな対応に関する明確で信頼できる情報

・公表が必要とされる者には限度があることを認める。

⑥ 外国人の異文化などには、最大限に配慮する。

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