《私が子供の頃に“子守”という言葉はよく聞きましたが、このエッセーを読んで、何年ぶりかで目にしました。果たして、今の時代“子守”は生きているのでしょうか。

親戚が集まれば、年長者が面倒をみるのは当たり前で、年長者は何も言われなくても、それなりの責任を感じていたように思いますし、近所の子供たちが遊んでいても同じような関係がありました。同世代が集まっていても、力関係で、そういう人間関係の秩序がありました。

高崎山の猿と同じようなものだったのかも知れませんが、自立的な子供社会が自然に出来ていました。もちろん悪さをすれば叱られていましたが、そこには余り大人も介入していなかったように思います。

ああいう環境は、どこに行ってしまったのか。》

今年は2020年、令和2年9月12日です。まだコロナの真っ最中です。

私たち夫婦の望みは、世界中の人達が持っている望みと同じで、早くコロナが終息して欲しい、生き延びて楽しく生活することです。昨日、昔の写真を見ながら家内と話していると、「あなたしか書けないフランスの話しをもっと書きなさいよ。ほら、赤ちゃんの話」と云っていました。

赤ちゃん、そう、それはドミニックの兄、ベルナールの女房、前にも書いたと思いますが。(ああ、名前が出てきません。頭のなかでは顔も声も出てはいるのに。頭のなかの線がどこかで切れているようで、どうしても出てこない人の名前が数人おります。)そうそう、初めてカメリアのバーでベルナールに会ったとき、人間でこんなに大きいのを見たのは初めてで、身長195cm、体重120kgでした。

そして女房も大きくて、185cm。(ああ気持ち悪い。名前が出てこない。ジャクリーヌでもジャネットでもない。ジャンヌはドミニックの姉だし、モニックでもない。頭文字から云ってAでもBでも、ダニエルのDでもない。息子たちの名前は、フランクとフィリップと、直ぐに出てくるのに。)体重は秘密と云うより分かりませんが、痩せても、太ってもいない。いわゆる普通でした。

クリスマスにドミニックの実家に集まったときに、初めて会いました。フランスでは、というよりもヨーロッパではクリスマスは家族と。そして、Reveillonレベイヨン大晦日は友人とです。

3人の子供を連れて家の中に入ってきたとき、大きい人というイメージはなかったのです。図太い声を予想していたら、豈図らんや、優しい声と小さな女の子を小脇に抱え込んでいたので。3人兄弟かと思ったら、この女の子は預かっているとのことでした。もっと面白いのは、彼女の子供たちが、女の子(赤ちゃん)の面倒を見ているのです。まるで妹のようにおむつやミルクも。あっ思い出した。女の子の名前はイザベル。彼女は、私たちを話しながら、ときどきイザベルを目で追っているだけ。

ようやく歩き出したイザベルは、楽しそうにフランクたちの後を追っていました。端から見ていると、イザベルも完全に家族の一員で、特別大事にされることもなく、怒られてもいました。私にとって不思議な光景でした。

後日このことをドミニックに話すと、彼女は長男のフランクが生まれてすぐにこの仕事を始めたそうです。ベビーシッターです。彼女は出産後に仕事を辞めたのを補うために自分の子供、フランクを育てるのと同時に他人の子供を預かって収入を得ていたのだそうです。簡単に云えば一人保育園。フランスでは珍しくないそうです。これは分かるのですが、フランクやフィリップとイザベルの関係を見ると、果たして自分がその立場になったときに違和感をなくせるかと。ひょっとするとお客様扱いしてしまうのではと。客商売の職業柄か、子供がいないからかは分かりませんが。

・・・と云って今、思い出しました。師匠の孫アニエス8歳、アレクサンドル4歳と私の関係を。毎年バカンスで1ヶ月も一緒に過ごすと。不思議なことに兄弟のようになっていくのです。特にアニエス、長女は、水泳を教えたり、算数も、お風呂も入れたりしていましたから。師匠がなくなって電話をかけたときに、私の声を聞いた途端に泣き出して、傍らにいないのが寂しいと云っていたのを思い出しました。彼女にとって私は兄のような存在だったのかも知れません。

これでようやく気が晴れました。

日本でもこれを参考に利用したならば、と思いました。昔はあったのです。子守という職業が。それがいつの間にか外来語のベビーシッターに変わり、このベビーシッターに何かあると、無責任なマスコミが大々的に取り上げ、大上段から厚生労働省のOBなる者や教育評論家なるものを連れ出し、やたらと欧米では、とか云って厚生労働省の施設の広さの規制ではと云いながら、保育園の話しにすり替えていますが、ちょっと待てよ!!欧米とは云うけれど、欧、欧州ヨーロッパと米、アメリカでは全然文化も地形も違うことをあなた方は理解した上で、それを大前提に話しているとは思えない。いつも机上の空論。

大丈夫。人間そんな悪い人ばかりじゃありません。

一人親で子供を育てている方に、もう一人育ててもらえれば収入も入るし、自宅での仕事にもなります。ときどき地域のご老人に見回っていただき、悩みや相談にのってあげれば良いと思います。

姉貴分の優子の孫メリッサ、日本人の父とブラジル人の母の子です。もう中学生ですがフランスのアルザスに住んでいます。小さいときにご近所に住んでいるイタリア人のご老人夫婦にときどき預かっていただいたおかげで、彼女の母国語は日本語、ポルトガル語、フランス語、イタリア語です。ひょっとすると、たぶんできないとは思いますが、アルザスの方言も。

ついに最後まで出てきませんでした。名前。ごめんなさい。

今度、ドミニックに電話したときに聞いておきます。

https://www.saibouken.or.jp/archives/3404