4 彼(対象者)の分析
環境分析は彼我それぞれの立場から考察しましたが、ここでは相対する立場に立って分析します。
組織的に分析する場合、「環境分析」と「彼(対象者)の分析」を行う者は、「我(自分と支援者)の分析」を行う者と異なる者に担当させます。
同じ者が分析すると、論理的整合性を取るように、自分の都合の良い分析をしてしまうからです。
分析の結論は、次のようにまとめます。
① 彼(対象者)の取り得る行動の選択肢
② 彼(対象者)が取る可能性の大きい選択肢とそれを選択する理由
③ 我(自分と支援者)に及ぼす影響
・我に最も有利な影響のある行動
・我に最も不利な影響のある行動
ここでも、思い込みや先入観を持たないように、幅広く考察し、そのなかから最も妥当性の高い選択肢を選びます。
分からないときは「決められない」という結論で問題ありません。
「分からないものは分からない」が正しいのですが、なぜ「決められない」と判断したのか、その要因を明らかにすることが重要です。
不明確な要因は、疑心暗鬼を生み、ストレスとなります。
要因を明らかにしておけば、情勢が変化していったときの判断材料として有益です。
5 我(自分と支援者)の分析
「Ⅱ-2 役割分析」で考察した目標を達成のために、可能性があって特徴のある選択肢を列挙し、そのなかから最も望ましい選択肢(行動方針)を選びます。
強み・弱み分析は、選択肢を列挙する前段階の基礎作業になります。
この段階では、幅のある目標から、より明確な選択肢(行動方針)として列挙します。
そして、「彼(対象者)の分析」の結論と組み合わせ、実行をシミュレーションします。
分析の結論は、次のようにまとめます。
① 我(自分と支援者)の最も望ましい選択肢とそれを選択する理由
② 我(自分と支援者)に最も望ましい状況
③ 我(自分と支援者)に最も不利な影響を与える状況
6 我の支援基盤の分析
組織的に検討する場合、主務者として働く立場と、それを支える立場がありますが、支援基盤を分析する人や部門は、支える立場になります。
例えば、人、物、金、システムなどを扱う人や部門です。
この人たちは、主務者が「我(自分と支援者)の分析」を行う間、それと連携して列挙された選択肢(行動方針)の実行の可能性を分析します。
もし、実行に影響する問題があることが分かったならば、対策と処置事項を検討し、「我(自分と支援者)の分析」に反映させます。
7 意義と効果
この思考過程は、原則ですから、時と場所に関わらず、どのような状況ででも使うことのできる、究極のアナログ思考法です。
考える手順と要素だけが重要で、注意すべきことは、不要な憶測をしない、先入観に陥らない、独断と偏見で判断しない、ということです。
それ以外は、分析内容を含み、立場や状況に応じて、自由に変化させて構いません。
習慣化すれば、迷わず、短時間に、問題の解決策を案出できるようになります。
この思考過程は、考える手順を示しているだけですから、もしパターン化してアウトプットだけをサンプルに使おうとすると、たちまち硬直化してしまいます。
思考手順をパターン化するのは良いのですが、安易に「パターン化した答え」を使うことは、避けなければなりません。
繰り返しになりますが、意義と効果をまとめると、次の通りです。
① 「役割分析」により、目的、活動の意義が強く意識される。
② 目標や行動の方向性が明らかになる。
③ 組織の考え方に統一性が生まれる。
④ 実行に組織の集中力が発揮される。
⑤ ストレス要因が極めて小さくなる。
・最悪の事態を避けることができる。
・予想外の事態が局限される。
・考える手順や要素が明確になっているので、迷いや悩むことがない。
・予想外の事態が起きたとしても、考える要素だけは整えられている。
・組織力を発揮できる。
少し専門的になりますが、判断した要因を明らかにすることは、情報活動の根拠が生まれることを意味します。常に判断が正しいか否かをチェックしなくてはいけませんから、そのための情報が必要不可欠のものになります。
憶測、先入観、独断と偏見に支配されている間は、情報の必要性は出てきません。
最近、統合計画を採用している企業が増えていますが、本来、統合計画は、ここに示したような考え方で計画を策定することを前提としています。
各部門が策定した計画を、広報部門がホッチキスしているような統合計画は、本旨を外れたもので役に立ちません。
また、経営計画と別個にリスク対応計画を策定しているのもおかしなことです。
リスク対応と経営計画が別々になっていたのでは、問題が生じたときには使えない計画だということになります。あらゆる問題点を克服しながら、目標を実現し、目的を達成するためのものが統合計画です。
組織全体の活動根拠にならない計画やリスクへの対応を考慮されていない計画は、自分の都合だけで物事を決めていく手法で考えられたものだと思います。
情報を生かし、危機管理を前提とした考え方を取り入れて欲しいものです。