Q 市役所は、ずいぶん古いですが、とても大きくて頑丈な、立派な建物ですね。
A はい。この本庁舎は、昭和8年に建てられたもので、平成26年に国の重要文化財に指定されています。玄関ホールや中央階段には、国会議事堂と同じ大理石が使われていて、化石が埋まっているようです。
Q 名古屋市の防災施策の焦点は、何ですか。
A 最大の死亡者数6700人、最大の建物全壊・焼失数約66000棟と見積もられている南海トラフ地震対策です。津波と水防です。
名古屋市は、東部の丘陵地と西部から南部に広がる濃尾平野にまたがる地域に位置しています。濃尾平野は沖積平野で、河川が発達し、海抜の低い地域が多いので、歴史的に何回も水害に見舞われています。
昭和34年9月の伊勢湾台風は、三重県、愛知県、岐阜県合わせて、死者約5000人を記録した明治以降史上最大の台風で、いまだに語り継がれています。
Q 地域防災計画は、どのようになっているのでしょうか。考え方や重点などについて、特徴を教えてください。
A 名古屋市地域防災計画の個別計画に位置づけられる「災害対策実施計画」を策定して、防災施策を進めています。
これは、名古屋市防災条例の自助・共助・公助による「災害に強いまちづくり」の理念を反映し、名古屋市総合計画(2019年度策定)、地域強靱化計画、関連する個別計画、水防計画などを総合しています。
昔の震災対策実施計画と風水害対策実施計画を統合し、より総合的な防災施策の推進を図る計画になっています。
計画期間は、2019年から2023年までの間です。
Q 時期的にはいつを焦点にしているのでしょうか。また、具体的な目標となる大きなイベントはあるのでしょうか。
A 2026年の第20回アジア大会、2027年のリニア中央新幹線の開業が大きな目標になります。
アジア大会には約150万人の観客来場が見積もられて、います。
またリニア新幹線開通で、東京と約40分でつながり、東京~大阪~名古屋を結ぶと約7000万人の巨大経済圏になるというので、その中心的な存在になりたいというので、さまざまな施策を進めています。
そのなかの柱の一つが、防災、安全安心な暮らしの確保です。
Q 施策を推進する上での問題点や解決しなければならない課題は、どういうところにあるとお考えですか。
A 最近の豪雨等による浸水被害を考えると、地形上の特性もあり、水防が焦点になります。特に、都市型の内水対策、ソフト面での対策を重視しています。
課題は、地域の防災指導者の育成などの人材育成です。
Q 市役所内の防災担当者の人材育成はどうですか。
他の自治体では、人事異動があるたびに、異動した人とともに組織での経験が失われてしまって、ノウハウが蓄積しないという悩みを聞きます。
A 同じことが言えます。優秀な方が就いているのですが、良い仕事をしているのですが、その人が異動したら経験が残らない可能性があります。
現場と企画・計画部門との人事交流ができないと、現場を理解して企画・計画を作成する、あるいは計画を作成して現場で周知徹底するという連携をとるのも難しいと思います。
いずれにしても、人材育成は大きな課題です。
【後記】
名古屋市の防災に関する取り組みの真剣さは、「防災危機管理局」を置いているところにあります。
それが形に現れているのが、「名古屋市災害対策実施計画」と「地区防災カルテ」です。
防災施策を総合的にまとめた「名古屋市災害対策実施計画」は、非常にコンパクトにまとまっていて、中長期的視点から、近年の災害からの教訓を受けて、目指す姿を明確にまとめてた非常に分かりやすい、素晴らしい計画で、一読の価値があります。
saigaitaisakujisshikeikaku_sasshi.pdf (city.nagoya.jp)
HPの防災関連記事も、体系的に、特に「地区防災カルテ」は、各区内の全学区毎、すぐチェックリストとして使用できるように、必要な情報を統一した様式でまとめてあります。
構成は次の通りで、ハザードマップ等を含み、一つの完成形になっています。
STEP1 地域特性の把握
1-1 地理的特性、社会的特性
1-2 想定される災害リスク
1-3 指定緊急避難場所、指定避難所
1-4 要配慮者利用施設(水防法等の避難確保計画)
1-5 学区独自の取り組みや行事などの状況
1-6 特記事項(地域特性に関すること)
STEP2 防災活動の把握
自助の推進
地域組織の運営
避難行動
避難所
訓練
名古屋市:地区防災カルテ(暮らしの情報) (city.nagoya.jp)
ただ、アンケート結果や防災活動の記録をつぶさに見ていくと、千種区見付学区以外は活用されておらず、これからどのように普及していくのかが課題だと分かります。計画にしたがって、普及に必要な資料を統一して整備したことが素晴らしいところです。
名古屋市としては、様式を統一し、デジタルマップ等を活用して、学区毎に必要な情報を提供する態勢を整えているのですが、地域住民を含む区以下の現場の方々が、パソコン画面を操作してHPを十分に活用することができるかどうか、データの意味を理解して地域活動に活かせるかどうかの二つが普及の大きな課題だと思います。
慣れてしまえば、簡単で、とても便利だと思いますが、HP全体の情報量と利用価値から考えると、「防災IT教室」のような形で、PCの利用とデータの意味を普及するところから、防災意識を普及しても良いのではないでしょうか。
非常に充実した内容であるだけに、それを活用してもらいたいものですし、今の時代の変革にマッチングした教育になると思います。