組織内での信頼関係を作るには、どうしたらよいか。
簡単なことですが、上から下まで、組織の代償を問わず、すべてのリーダーは皆、頭を悩ましていることと思います。
私が、気をつけてきたことが1つありました。
それは「他人の悪口を言わないこと」。この悪口には「不平・不満」も入ります。
立派な理由があったわけではありません。ただ単に、私の気持ちの問題で、人の悪口を言うと、他人を批判したり貶めたりして、自分自身を正当化する、情けない、弱い人間になってしまうような気がしたので好きではなかった、ただそれだけでしたが、後から考えてみると、結果的に、これがチーム・ビルディングにとって最も重要なことだと思えるようになりました。
幸いなことに、私の周りで、他人の悪口を言う人は現れませんでした。というよりも、知らず知らずのうちに、排除していたと思います。
面白おかしく、噂話をする人は、必ず、同じように他のところに行って噂話に花を咲かせます。笑って、元気を出して終わる話であればよいのですが、そのなかには大概、人を貶める話が入っています。そういう人は、どこへ行ってもそういう話をします。
それを聞いて笑っている人たちは意識していなくても、その人が自分のことを笑い話のネタにされていることを気にするようになります。「どう言われているのかしら」と。
チーム内に、疑心暗鬼の種を撒いているようなものなのです。
そういうチームは見事に、十中八九間違いなく、異なる考えを持つ者を排除したり、強い影響力のある者の考えを忖度することを良しとしたりするようなっていきます。
最悪は、「皆、こう云っているのよ。私はそうは思わないんだけどね」と言いながら、自分だけは善い人なのだとアピールしながら、さんざん人の悪口を言いふらすケース。
そういう人がいるチームは、すべて他人の所為にするようになり、誰も自分の言ったことに責任を持たなくなります。
癖というよりも身に染みついてしまっていて、それが生きる術になっていたりしますから排除するしかありません。こういう性格の人は、誰か聞こうとする人がいる間は続きます。
排除できないのであれば、1回言って終わることはありませんが、「皆の前で人の悪い噂話をするな」と、その都度皆の前で、その考えをはっきりと否定することです。
不平不満があるならば、なぜそう思うのか、どうしたいのか、何をしたいのか、不平不満を解消するにはどうすればよいのかを語らせることです。そうすることで、マイナス感情から、ポジティブな方向に思考が向くようになります。
そして、ポジティブな回答が出てきたら、すぐにそれを実行することです。
成否は問題ではありません。不満をなくし、自分の考えを受け入れてもらい、前に進む経験をさせることによって、「考える癖」をつけることです。悪ければ、責任を問うこともなく、すぐにまた新しい方法に変えてしまえば良いだけです。
こうやって、参画意識を高めることが、チーム・ビルディングの出発点です。
不平不満や悪口を言う人ほど、コミュニケーションに不満を持っています。
言いたいことを素直にストレートに言えない、聞いてくれない、あるいは表現方法を知らないからです。
その原因をつぶしていくための第一歩が、“悪口を言わないこと”です。
恐縮ですが、私自身の笑い話のような経験談を。
「お前は、気を遣わずに、好き勝手にものを言う。少しは気を遣ったらどうだ」と、上司からも部下からも、言われていました。もちろん「気を遣っているから、言っているのだ」と答えていましたが。
あるとき、どこにでもいる一言居士の部下が色々言うので「こういうことって、自分の考えを言わない方がいいのか?」と聞くと、皆、「いや、言った方がいい。しかし、言い方がキツい」などと、クドクド説教します。
その一言居士の部下に「ところで、さっきからかなり文句を言われているように思うんだけれど、私の前の上司にも、そうやって言っていたのか?」と聞くと、「そんなことは言えなかった」と。「だったら、今の方がいいじゃないか」で一件落着。
異なる勤務地で都合3回、同じような会話と答えがありました。
決まったらやる、決まる前には自分の考えをはっきりと伝える。何を言っても、悪口も文句も批判もないのですから、そういう環境を作ることにつながります。
私は、自分の仕事について、自分の考えを言わない人は、プロであることを否定しているに等しい、と思っています。
この悪口や不平不満を言うな、というのは、子供の大切な躾です。
言わないうちに、「自分の思いをどう表現するのか」を身につけていきます。こういうところから、ユーモアの精神も育ってくるのではないでしょうか。
人前で悪口を言う、批判をすることを生業としている人たちが目立つのは、子供の躾の上でも、レジリエンスに優れた人材を育成するにも、良き人格を形成するにも、良くないことだと思います。