■概要

1 全般

阪神淡路大震災後建設された全国有数の広さと規模、施設を持つ、充実した防災センターで、固い地盤の上に建つ。

神奈川県は、災害規模に応じて、4段階での対応を考えている。

① 基礎自治体(市町)で対応できるレベル

② 県内で応援(消防等)が必要なレベル

③ 県内での対応に、広域支援が付加されるレベル(断層帯地震や広域の水害等)

④ 広域支援での対応が必要なレベル(大地震、津波等)

このため、県庁及び総合防災センターを中心とし、7つの地区に現地対策本部を配置できるように防災拠点を用意している。

また、高速道路のJCに近く、近傍に、航空輸送基地(厚木基地)あるのも良い。

首都直下型の地震でも、広域支援基盤として、重要な役割を果たします。

神奈川県では4名の自衛隊OBが、県内では総数33名の自衛隊OBが防災担当部局で活躍されています。

余談ですが、横浜市の消防レスキュー部隊は「レンジャー」という名称だそうで、これは、創設当初、富士学校レンジャーが教育を担当した影響だそうです。

2 設置   平成7(1995)年4月

3 所在地  厚木市下津古久280番地

4 面積   敷地 81,018㎡、建物 26,970㎡

5 役割

① 災害活動中央基地(予備CP、災害時の応急活動支援拠点、物流拠点)

② 防災知識の普及啓発拠点

  • 防災情報・体験フロアの運営、研修
  • イベント実施
  • 図書閲覧、DVD、パネルの貸し出し等

6 地位(位置づけ)

■内容

⚫ 総合防災センター所長兼消防学校長との懇談

⚫ 防災備蓄倉庫の視察

  • 118品目、約29,000点の資機材等を備蓄
  • 緊急消防支援隊への物資提供
  • 支援物資の供出
  • 救援物資の搬入、搬出拠点(国のプッシュ型支援を前提)

⚫ 防災情報・体験フロアの視察、体験:電話予約046-227-1700(開館日の0900から1630まで受付)

  • 地震体験コーナー   震度7の三方向の揺れで、東日本大震災型(プレート型)と阪神淡路大震災(直下型)の地震をシミュレーション画面を見ながら体験
  • 風水害体験コーナー  今回は風だけでしたが、風速30m/sまでの風雨を体験可能
  • 消火体験コーナー   センサー付きの火災映像画面に放水することにより、リアルに消火器の使用方法を学び、消火活動を体験
  • 煙避難体験コーナー  建物内の暗い迷路のなかで、煙避難を体験
  • 資料展示

 

【所見】

1 全般

県全体の防災システムはよく考えて、整備されていると思います。

災害時の指揮は、災害規模に応じて、県庁と総合防災センターと地域の災害対策本部が連携できるように、指揮統制システムが整備されているとのことでした。

県の最大の関心事である災害現場の支援は、総合防災センターが、災害時の支援物資の供出、県外からの支援(部隊と物資)の受け入れ、県外への(物資)支援を指揮統制する態勢を整えています。

2 課題と提言

神奈川県だけではなく、全国の自治体に共通する課題への提言としてまとめました。

一つは、基礎自治体の災害対処能力、つまり消防の支援態勢と消防団の勢力確保です。

単一の基礎自治体では消防の勢力が小さいので、効率的に災害(平時の運用を含む)に対処するためには、広域の支援態勢を取らなければなりません。しかし、広域の支援態勢を取ると、基礎自治体の首長の災害対応手段を取り上げてしまうことになってしまう、という問題です。

住民の生命財産の安全安心を確保する責務を持つ基礎自治体の首長から完全に実働部隊を取り上げてしまうわけにはいきません。首長が責任を持って職務を遂行するためには、やはり実働部隊を持たなくてはなりません。

少なくとも、広域で消防を運用する際、首長と情報を共有し、活動の実態等を把握させておく必要があります。そのために、災害時に基礎自治体間で情報共有する訓練を取り入れているのは、素晴らしい取組だと思いました。

また、消防団、水防団は、基礎自治体の長が災害時に使用できる、貴重な人的資源です。

現在、ボランティア活動のように極めて低額の手当てで募集していますが、相当の給与を支払い、一定の教育訓練研修を義務化して、運用すべきです。

人が集まらないのは、相当の対価がないからで、人がいないからではありません。対価があれば、人は集まります。

基礎自治体の首長が、災害対策基本法で定められた責務を果たせるように、制度を整備するのは国の責任で、ここでやるべきことは予算措置です。

災害が日常化する時代、消防団は、ますます重要な役割を果たすようになるでしょう。

もう一つは、防災担当者(基幹要員)の人材育成に関する課題です。

現場の防災職員は、万が一に備えて訓練しておかなければなりませんし、防災に関する教育研修は不可欠ですが、実務を担当しながら訓練や教育研修を受ける余裕がないのが実態です。

しかも、自治体の職員は数年で移動してしまいます。

実務を持っていると、訓練、教育研修のための時間を取ることができませんので、時間外勤務によって訓練や教育研修をしなくてはなりません。

しっかりした教育訓練制度を整備したいものです。そのためには、シフト勤務を組めることを前提として、教育訓練を受ける所用の人員を(実務)定員に増加して定員とすべきでしょう。

消防職員も同じことが言えます。

消火、救急救命、特殊災害対応等、多様な特技を持つ人材が器財を駆使して、救急救命活動をするわけですが、万が一に備えて、複数の特技を操れるように教育訓練することが必要です。

このような人的基盤を固めることによって初めて、首長は、住民の生命・財産を守る責務を果たすことができるようになります。

もちろん、現状、消防は使命感に燃えてそのように努力していますが、過重な負担を強いることとなっています。シフト勤務を組んで、教育訓練研修と実務を無理なくこなせる態勢を整えることが必要です。

これは、国が予算措置すれば、簡単に実現できます。

三つ目は、災害対策基本法に定める国と都道府県と基礎自治体の役割区分に基づいて、政令指定都市の役割を明確にすることです。

政令指定都市は、平時、都道府県と同等の大変大きな権限を与えられているため、都道府県を超えて、国と折衝、調整するという話がよく聞かれます。政府にとって政令指定都市と良好な関係を保つことは政治的なニーズがありますから、平時は仕方がない面はありますが、国の防災システムとしては分かりやすく、防災の広域自治体である都道府県と基礎自治体の関係を明確にして、災害規模に応じた責任権限を明確にしておくべきでしょう。

例外を設けるべきではありません。

中村純也総合防災センター所長兼消防学校校長の中村純也様、神奈川県防災アドバイザーの岡崎勝司様には、お忙しいなか、お時間を頂戴して、貴重なお話しを聞かせていただきました。

ありがとうございました。

以上