自衛隊は部隊の数が多いので、新隊員が入ってきても、一つひとつの部隊には、ほんの数名ずつしか配置されません。もしくは配置されない部隊もあります。

部隊長は、自分で部下を選ぶことができません。

だから、与えられた部下をどう育てて、どう使うのかが、管理者の仕事であり、仕事のできる管理者かそうでないのかの「腕」になります。

部下に対して文句を言う人は、マージャンやカードで配られた手に文句を言っているようなもので、勝負に勝つことはありません。

「人は見た目が9割」だとは言われるけれど、仕事はやらせてみなければ分からないので、考えることは1つだけ。

「最悪の事態は避ける」。

・・・・そう、危機管理の原則と同じです。

その人がより適していそうな職務(場所)を選んで、そこで使えるように育てる(教育する)ことがポイントになります。

どうしても適所が見つからないときには、人扱いのより上手な者の下で仕事をさせます。「おいチョット、此奴の面倒をみてやってくれ」と。

適材適所というよりも、ハズレを出さない。

一番向いていないと思われる場所を避けさえすれば、あとはどこでも同じです。

その人が少しでも当てはまりそうな職務(場所)を選んで配置します。「最悪」でなければ、どこへ配置しても「君に、ぴったりだね」「天職だね」と言い聞かせる。

初めてで、本人だって向いているかどうかは分からないのですから、周囲から褒められたら「・・・そうかな」と思うようになるのが人間です。

でも、好きか嫌いかは、あります。だったら好きになってもらうしかない。

そのためにも、褒めて育てるしかないのです。

これが自衛隊流の人を育てる極意。

できないことをできるようにするのは、本当に苦労します。

しかし改善していくのは、教わる(やる)方も教える(やらせる)方も楽です。ひょっとすると、楽な道を選んでいるのかも知れませんが、得てして、適材適所とはそういうもの。

決して、無理をしない。無理をさせない。

改善していく癖をつけると、苦手を克服しようとか、嫌なことに取り組まなくてはいけないというマイナス思考は出てこなくなります。

すごく簡単なことですが、昨日よりも今日、今日よりも明日、少しずつ良くなれば上出来です。より早く、より効率的に、より上手く。

仮に、上出来ではなくても、継続できてさえいれば合格で、褒めるべきことは“継続”になります。

継続していれば、いつかは良くなる可能性がある・・・・というプラス思考です。

人を育てるというのは、その職の知識や技能を身につけさせるだけではなく、その人のプラス思考を育てることを意味します。

それが分かるまで、色々なものを受け入れて、試行錯誤することになります。

大切なことは、本人のメンタリティです。

自分が何も変える必要がなくて仕事ができるなどというのは自信過剰で、奢りでしかありませんし、そういう人は成長しない人でしょう。

適所は、自分で見つけるまで、努力しなければ見つからないもの。

適所を見つけたときに、初めて他の人が「適材適所だ」というのです。