■概要
令和4年12月15日(木)1430~1630の間、名古屋市港区の区本部訓練を見せていただいた。
どこの自治体の防災担当者も同じ悩みを抱えているのだが、役所をあげて本部訓練ができるのは、年1回程度。しかも、他の実務を抱えている方々が防災訓練に参加するためには、現業に差し障りがないように企画しなくてはならない。訓練を時間外に行うためには、残業手当の予算措置が必要になるなどの制約が多い。
準備から訓練実施まで、概ね課業時間内で完結しなくてはいけない。
そういった制約のあるなかで、短い時間に、簡潔にまとまった内容の訓練になっていて、見せていただき、大変勉強になった。
クロノロジーを作成して、経過を記録、確認する情報処理のテクニック(ノウハウ)は、実務でとても役立つもので、業務の効率化に有益なので、今後、是非取り入れてもらいたい。
■地域の特性
人口約14.5万人。約62000世帯。
面積45.64㎢。
海抜ゼロメートル地帯が多い平野部で、名古屋市で唯一伊勢湾に面している。
区内に流れる河川は西から順に海部郡蟹江町・飛島村との境界線を日光川・福田川・戸田川・東小川・新川・庄内川・荒子川・中川運河・堀川が縦断し、山崎川・大江川が東海市との境界線を流れ、東部を区の最南東にある天白川が横断している。
名古屋港を擁するウォーターフロントで、工業地域である一方、西部の南陽地区を中心に農業振興地域(米作地域)が広がる
名古屋市16区の中で最も人口密度が低く、唯一5,000人/km2を下回る。
■区本部訓練の概要
1 場所
港区役所総務課執務室、港区役所第三会議室、港保健センター執務室、南陽支所区民生活課庶務係執務室
2 想定の概要
① 三重県南東沖を震源とするM9.0の南海トラフ地震が発生
② 市域では最大震度7を観測、家屋倒壊、火災、浸水、液状化、インフラ破壊、交通事故など甚大な被害
③ 震災から48時間が経過し、多数の避難者が指定避難所に避難
④ 区本部は第四非常配備での職員参集が進み、各班に分かれて災害業務を実施
3 実施要領
図上シミュレーション方式
情報付与カードを用いて様々な状況や要望を付与
4 訓練参加者
区本部職員(各課室長及び各課室係長級職員並びに防災担当職員)、港土木事務所及び港消防署並びに港警察署
■所見
1 全般
(1) 訓練参加者のレベル(各課室長及び各課室係長級職員並びに防災担当職員)と訓練要領(区本部各班の対応を名古屋市区災害対応マニュアルに基づく判断)が適合していたので、短時間で効果的な訓練ができていました。
(2) 訓練の目的「職員の災害対応能力の向上」と「各部の協力・連携体制の一層の強化」は達成されていました。
2 良かった点
(1) 実施要領がシンプルで分かり易すく、勤務時間内の限られた時間のなかで、効率的に実施されていた。
(2) 訓練要領の分かりやすくて、全員が非常に熱心に取り組んでいた。
(3) 27個のバリエーションに富んだ状況が用意されていた。
(4) 区本部の状況判断に必要なデータが、情報共有すべき被害状況が、分かり易く掲示されていた。
(5) 区本部に入ってきた情報をすぐに読み上げ、全員に周知していた。
(6) 訓練の最後に、避難所派遣職員の持ち出し用品を周知徹底し、南海トラフ臨時情報について教育していた。
3 改善すべき点
(1) 区本部が、誰の判断と指示に基づいて動いているのかを、常に明確にすべきです。
ア 係長級以上の少数の参加者だったので、各班が自主的に処置できていましたが、区本部として、誰の判断と責任で処置しているのかは常に明らかにしておくことが必要です。
イ 多数の者が交代で勤務しているとき、責任の所在が不明確になります。
ウ また、処置に“漏れ”が出てくる可能性もあります。区本部に入ってくる情報の整理の仕方(情報処理要領)を工夫すると、より効率的に動けるようになります。基本は次の通りです。
(2) 区本部に入ってくる情報の整理の仕方(情報処理要領)を工夫すると、より効率的に動けるようになります。基本は次の通りです。
ア クロノロジーを区本部勤務者全員が見えるように、すべての情報を時系列で掲示する。
(いつ、どこで、事象、担当部署等の一覧表)
イ 被害情報は、全員が分かるように壁面にできるだけ大きく掲示する。
・区内の避難所等、地域区分が一目でわかる地図を展開することを習慣化する。
・情報共有がしやすくなり、区の地域の被災状況等がイメージアップできる。
ウ 各班は、処置事項を処置カードに書き込んで、すべて記録する。
エ 記録(情報)と、各班が処置した事項を照らし合わせてチェックする。
オ 一定期間ごとに、クロノロジーと処置カードをチェックして、行動記録を整理する。
(3) クロノロジーと処置カードによって、行動の根拠となった情報、判断・処置事項、責任者、処置結果などの正確な記録が残されます。
(4) 入ってくるすべての情報に対して、もれなく処置できるようにするためには、各班の任務を再確認する必要があるかもしれません
【後記】
短い時間のなかで、訓練の狙いを絞って、効率的な訓練をされていました。
区本部は、災害対応の現場を握る重要な位置づけにあります。
区本部のコア要員の練度と意識を高めることが名古屋市全体の防災能力を高めることにつながることを再認識しました。
以上