■概要

年1回計画される区本部訓練で、今回は、南海トラフ地震発災後3時間以内に参集し、区本部に応急的に勤務することとなった職員に対する訓練を実施していた。

訓練計画は、訓練参加者に配慮して細部まで準備されていて、「とりあえず参集できる可能性のある職員」に区本部の活動を周知し、イメージアップさせ、普及することができ、当初の目的は達成できたものと思う。

想定は、最も現実的な場面をとらえた訓練である反面、最も難しい場面を想定しての訓練であった。

厳しい状況となった一つ目の理由は、訓練対象者(参加者)が、必ず区本部で勤務することを約束されていない職員となったこと。二つ目は、発災後、参集した者が応急的に区本部に勤務する場面を想定したため、職務のリーダーが不明確なまま訓練をすることとなったこと。三つ目は、区本部訓練への参加が初めての者が半数以上となったこと。

訓練開始当初、参加者の動きがぎこちなかったが、訓練後半、各人が役割を認識して積極的に動けるようになった。

地域の特性

人口約11万人。面積11.22㎢。名古屋市の文教地区。

全体的には、平坦な土地。概ね山崎川より東は丘陵地(八事丘陵)。

■区本部訓練の概要

1 目的

(1) 区本部と各区隊の連携及び災害対応力の向上を図る。

(2) 具体的な到達目標は以下のとおり

 ア 地域防災計画及び各種マニュアルに基づく対応の検証

 イ 区本部と各区隊間における連携(情報連絡と活動)

 ウ 区連絡会議を開催

2 日時

  令和5 年1 月16 日(月):1330~1530 応急対策図上訓練、1600~1630 区連絡会議

3 訓練項目

(1)応急対策図上訓練

(2)区連絡会議

4 参加機関

  区役所、保健センター、環境事業所、土木事務所、上下水道局営業所、消防署、警察署

■所見

1 全般

 初めて訓練に参加する者が半数以上であったが、訓練参加者は熱心に取り組んでいて、充実した訓練になっていた。参加者に区本部の活動を周知することができたものと思われる。

 想定上、発災後3時間でとりあえず参集した職員を対象として区本部訓練を実施したため、区本部の練度向上や各区隊の連携までには至らなかった。

2 良かった点

 (1) 想定、区本部機能などの訓練準備が周到になされていた。

 (2) 訓練参加者に、南海トラフ地震への関心を高めることができた。

 (3) 区本部と各区隊を相互に知る機会となった。

 (4) 初めて区本部訓練に参加した職員に、区本部の現状を周知することができた。

  ア 区本部のレイアウトと機能

  イ 業務の概要と役割

  ウ 情報の流れ等

    ・区本部各班の業務と現業との連携

    ・各区隊との連携

    ・名古屋市防災システム

    ・区民への情報発信

 (5) 防災無線の使用初めて区本部訓練に参加した職員に、区本部活動を体験させることができた。

3 改善すべき点

 (1) 初めての訓練参加者が多かったため、体験的な訓練の場となった。

 (2) 発災後3時間以内にとりあえず参集した人員で区本部を編成した訓練であったため、区本部各班のリーダー(指   導者)が不在のなかでの訓練となった。

 (3) 区本部内のリーダー不在のため、各区隊との実態のある連携をとる訓練ができなかった。

 (4) 情報の整理の仕方(クロノロジー・情報処理要領)をルール化して周知すると、効率的な区本部訓練ができるようになる。基本は次の通り。

    ① 区本部勤務者全員が見えるように、すべての情報を時系列で掲示する。

       (いつ、どこで、事象、担当部署等の一覧表)

    ② 被害情報は、全員が分かるように壁面にできるだけ大きく掲示する。

      ・区本部には、区内の避難所や地域区分が一目でわかる地図を展開することを訓練時から習慣化する。

      ・情報共有がしやすくなり、区の地域の被災状況等がイメージアップできます。

    ③ 各班は、処置事項を処置カードに書き込んで、すべて記録する。

    ④ 記録した事項(情報)と、各班が処置した事項を照らし合わせてチェックする。

    ⑤ 一定期間ごとに、クロノロジーと処置カードをチェックして、行動記録を整理する。

 (5) 今回の訓練参加者のレベルでは、最低限、上記「(4)-①」の情報を掲示させれば良かった。

【後記】

周到に準備されていたにも関わらず、訓練目的と訓練参加者のレベルが合致していなかったことが残念だった。

発災後3時間以内で確実に参集できる職員を把握して区本部要員に指定し、その要員をもって区本部を立ち上げることができるように訓練を企画すべきだと思う。

以上