今朝の読売新聞一面のコラム「地球を読む」のコーナーに、世界に根付いた「日系人の歴史」と題し、世界に根付いた500万人の日系人移民の歴史を紹介する、田中明彦氏の記事があった。

日本人移民の人たちのメンタリティはどこから生まれてきたのか。日本人は、国内志向の意識が強いものだと思っていたが、昭和11年に出された少国民文庫『日本人はどれだけの事をして来たか』(西村眞次著、新潮社)の序文と結言に、当時の日本人のメンタリティが現われているように感じられたので紹介する。

「日本は島国だが、日本海の彼方にはシベリアの広い平原があります。朝鮮からは満州蒙古へ地続きです。支那海の彼方には大きな支那の農業国があります。太平洋の対岸は南北アメリカで、そこにはまだ開墾されていない山野が展開しています。南の方には南洋の島々があり、ずっと南に進めばオーストラリアに達し、西に折れるとインド支那諸国、インドに出ます。これらの諸国は大昔に私たちの祖先の出てきた場所、または移り住んだ場所であって、まったく無関係の場所ではないのであります。私たちが目をあげて四方を見ると、波の彼方、雲の彼方に、広い大きな私たちの安住地を求めることができます。

つぎには日本の民族の人種的位地を知ることが大切です。日本民族は人種学上、近世日本人という位地を占めていますが、その一人ひとりを調べてみるといろいろ体質上の特徴が(略)、さまざまに異なっております。これは日本人が純粋な日本人ではないこと、すなわち混血人種であることの証拠であります。日本人はツングース族を基調として、旧アイヌ族、ネグリート族、インド支那人、インドネシア人、漢人、蒙古人等の血液を交えたものであります。私たち日本人が混血民族であることを、私たちはつい最近までほとんど知らずにいたので、そうと知ると何だか悲しいような気になりますが、混血したのは二千年も三千年も前のことで、その間に祖先の血の良いところのみを伝えて、悪いところは伝えなかったから、結局日本人は優秀型の人種であるということができるのです。

第三には日本文化を知ることが必要です。私たち日本人は長い間に、環境によく応じてゆける活発な性質をもち、平和を愛し、道徳を重んじ、他と協調してゆくという誇るべき民族性を造り上げましたが、そのおかげで固有の日本文化以外に、外国文化をどしどし取り入れて、これを消化し、改造して日本独特のものとしてゆくことが出来ました。こうした日本文化の精髄というべきものが、私たちの愛する日本国家であります。

(略)

この本を読んだ皆さんは、ここに書かれたことだけでも、日本人が優れた素質を備えている民族であること、そして今後ますます世界の文化のためにつくしてゆくべき使命を持っていることを自覚して下さることだろうと思います。そういう自覚を持った皆さんの、これからの仕事に、私は深い期待を持っているものであります。」

そして、この本の最後に、次のように述べて終わっている。

「・・・これからの日本は世界の国々から受けた恩に報いて、いろいろと世界人類のためになるようなことをなしとげて行くことでしょう。

皆さんも(略)たとひどんな偉い人におなりになっても、また偉い人になれなくても、力をあわせ心を一つにして、この日本国が世界平和のために少しなりとも貢献するように働いてください。また日本文化をますます発展させて行くと共に、多少なりとも世界文化をすすめ、人類の幸福を増すように心掛けることを忘れないでください。」